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February 2008

February 28, 2008

クラリネット・ジャズ・ミニコンサート。

2008_2_28cla


お金がないので暇つぶしに図書館に行ったら、お昼のミニコンサートが行われていました。
このクラリネット、うちのバンドで使われている物よりも少し長いのでしょうか?
何となく低めの音が実に心地よく、とてもいい感じ。
途中で帰るのがちょっと失礼な気がしたというか、
うちのバンドの演奏につき合ってくださる奇特な人たちのことを考えると、私もここでつき合ってしまおうというか。
いや、お上手だったんです、本当に。
よくもあんなに指が動くものだといたく感心しました。
まぁ、電子ピアノの音の方がえらく安っぽく聞こえてしまうのですが。
ブラインドテストをしたら聞き分けが出来なかったりして・・・自信ない。

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February 22, 2008

鉄砲勇助。

2008_2_22tosho

上方では大ボラを吹くことを鉄砲を言うと表現したらしんですわ・・・。
県立図書館に行ったのは一体何年ぶりでしょうか?
神社建築を調べに行って以来でしょうか。。。
不思議ですが中にはいるとなんか、臭いんです。
古書のにおいでは無く、なんかくさいんです・・・・他の図書館ではあり得ません。


  鉄砲勇助


 挨拶というのはまあ、相手に合わしてりゃ半分ぐらいは挨拶になります。
まあ心にもないことを言う場合が多いですな。大体この人間はウソをつかなんだら
生きて行かれんのやそうでして、腹の中と口先とは、えらい違いですな。
もう顔だけ嬉しそうな顔をして、いやあ、まあどうぞごゆっくりしてください。
……腹の中では、早よ去にやがったらええのになあ。こいつまだ居てる気ィやでェてなもんで。
踊りの会なんかで子供が踊ってるのんなんか見てましても、お母さん方はみなもう自分の子供が最高ですわな。
それでもやっぱりよそのお母さんに、まあ、お宅のお嬢ちゃんが一番おきれいでお上手で……。
腹の中ではあんなもん、何を着せたかて似合うかい、てなことを思うてます。
皆こう口と腹とは違いますな。というてこれを正直に口に出しますとえらいことになりますさかいね。
それでまあ世の中のウソは潤滑油やとも言われています。
 エー、外国でどうも日本人は、ウソというものに対して寛大であるてなことを言うんですが、
日本でもあのウソという言葉と、偽りという言葉とは、これはえらい違いで。
偽りというやつは、これはいかんのやそうですな。これはもう悪、悪意なんです。
ところがウソのほうはほどほどに必要なもんでして。
外人かてみな、あの女の人にべんちゃらを言うてるのなんか、かなりひどいことを言うてまっ
せ、そら。しわくちゃのお婆ンをつかまえて、いつまでもお若うて、おきれいな……と、
言わないかんのやそうですな、あのヨーロッパのほうでは。
ああなるともうちょっと度がすぎてるように思うんですが。
 わたしらはもう年がら年中、ウソをついて商売にしてます。
このはなし家の見台の上へ、これ、一年間のウソが積もりますのや。
ほいでこれ年に一ぺんずつ、こいつを削りましてね、これをこう川へ流すんです。
で、これがカワウソ……ということになるんやそうで。これはわれわれの先輩がよう言うとりましたが……。
 まあウソは、お互いに適当につかんなりまへんな。
四月一日というのは、これはエイプリルフールとか言うて、けんたいでウソがつける日。
ああいう日にウソのコンクールをやりまして、みんないろんなウソをついた中に、やっぱり一番、
最高のウソは、わしは生まれてからウソなんかついたことないという男があって、
これが一等やったそうですが……そら実際そうやろうと思いますな。
 エー、偉大なるウソつきになるというと、もうウソをつくことに生きがいを感じてるような奴がありまして、
有名なウソつきの名人が死に際に、家族やら、親類やら、友達を枕元へ集めて、
今までいろいろとウソをついて済まなんだ。わしが死んだら庭のあの柿の木の根もとを掘ってくれ、
あすこに壷があって全財産がそれに入れて埋めてある。
せめてもの罪ほろぼしに、みんなで分けてもらいたいと言うて死んだ。
あんな奴の言うことあてになるかいと思いながら掘ってみたら、なるほど壷が出てきた。
人間、死に際だけはウソはつかんもんやとふたを開けてみると紙ぎれが一枚出てきて、
これがウソのつき終いと書いてあった……。
 死んでからまだウソをついた奴があるという……。
まあ人の顔さえ見たらそういうことを言うて喜んでる人ちゅうのはあるもんで。


O「こんにちは」
△「オッ、こっちへ入りいな。なんやバタバタと」
O「いやあんた、今朝、うちの隣のおばはんが」
△「隣のおばはんがどないしたんや」
O「いや、うちの隣のおばはんが、猫の子をうんだんや」
△「またや、またや、またやもう……、お前はじきにそう いうことを言うン。
 人間が猫の子を産むわけがないやろがな」
O「……誰がそんなこと言うたん」
△「お前が今言うたやないかいな。隣のおばはんが猫の子を産んだて」
O「違いまんがな。隣のおぱはんが猫の子を踏んだちゅうたんや」
△「どつかれるで、そんなこと言うてたらお前……。産んだんと踏んだんとえらい違いやがな。
 そやさかいお前とは誰もまともの口をきかんちゅうのや。まともな話はでけんのかいな」
O「ほな、今見てきた話をしょうか。つい、今見てきた話」
△「何を見てきたんや」
O「そこの踏切りをわたしこう渡ったン、へえ。
 ほんならな、もうあの遮断機が下りかけて、警報が鳴ってるのに、あんなあわてもんがおりまんのやな。
 サーッとこう渡ったン。
 と、連れの女の人がね、その、自分の亭主かなんか知らんけど、男がパーツと渡ったさかい続いて
 ツーと渡ったけど、この女はあんた、着物を着てるさかいな、足もとがこうもつれて、
 バタッとこけたんでんね ん。もう電車はブレーキ間に合わん。
 ズーッと。エェ、目の前で片腕切断、血だらけ……。その男、薄情な奴だっせ。
 それをこうちょっと見ただけでスーッと行きかけるさかい、ほいでわたいが言うたったんや。
 ちょっと待ちなはれ。あんたの嫁はんかなんか知らんけども、お連れがこんな、こんな大怪我をしてんねん、
 片腕がちぎれてまんのやないかいな。それを見捨てて行くとは薄情ながな、
 ちゅうたら、いや、わしゃもう手の切れた女に用はないとこない言う。……おもろいやろ」
△「……何を言いやがんねん。お前の話は乗せられると思いながら、ウカウカと聞いてまうねん。
 何が手の切れた女やいな、そやさかい世間の人はみんなお前のことを千三屋(せんみつや)と言うねん。
 なんのことか知ってるか、おい。千、話をしたら三つしかほんまのことはないちゅうのや、
 お前だけは。ちいとはまともな話がでけんのかいな」
O「ほな今日はひとつ、私が日本国中を旅して歩いた話をしょうか」
△「もうそれを聞いただけでウソということがまるわかりやがな。お前が日本国中旅して歩くわけがないがな」
O「何を言うてなはんねん、私はこう見えても若い時分はな、たった一人でそら至るところへ
 旅してまわったんでっせ」
△「ほんまかいな」
O「ほんまでんがな。いやあ、そら木曽の山の中で、道に迷うた時の話やみな、
 そらもう小説や芝居よりおもろいなあ」
△「ああ、木曽の山中で」
O「へえ。あのへんは暗いところでっせ。昼でも暗いんだ。
 ちょっと陽が西へかたむくともうじきに真暗になってしまいまんのやがな」
△「そない暗いかえ」
O「昔からよう言うがな、木曽暗いちゅうて」
△「そらお前、クソくらえと違うかいな」
O「なんでもかめへん、とにかく暗いとこでんねん。えらいところで日が暮れた。
 宿屋はとてもありそうには思えんしなあ。野宿でもせんならんかいなとこう見ますというと、
 向こうのほうに焚火の灯りが見える。火をたいてるのは人間が居るにちがいおまへん」
△「そらまあそうやなあ。あんまり猿やなんかは火はたかんわいな」
O「さあ、そこには人がおると思たさかいね、その火に近づいて行ったら、あんた、
 こらもうよけい物騒なことになったン」
△「なんでえな」
O「焚火をとりまいてる奴が、さあ人数にして六、七人。
 見るからに人相の悪い、一癖ありそうな奴が並んでまんのやがな。
 ここで弱味を見せたらあかんと思たさかいね、ちょっとたばこの火を貸してくれと言うて
 そばへ寄って行くというと、おお客人、良えとこへ来たな。
 ここは地獄の一丁目があって二丁目のないところや。身ぐるみ脱いで置いて行けばよし、
 四の五のぬかしたら生命にかかわるでェちゅうねん。こっちは急(せ)きも慌てもせんわ。
 相手の顔へ煙をフー。と吹きかけて、さてはおのれらはこのへんに住まいをする、一足二足の履物やなあ」
△「……それ何のこっちや、それは」
O「合計で山賊という洒落や」
△「もうそんな阿呆なこと言うてるのやないで、お前。そいつらは山賊かい」
O「山賊でんのやがな。おい、このガキは手向かいさらす気ィらしい、生意気な奴や、いてまおか。
 たたんでまえ。大勢があんた得物を持って向こうてきたさかい、こんな奴を六人もヒ人も相手をするのは
 もう、じゃまくそうていかん。力のほどを見せてぴっくりさしたろと思て、ひょっと傍らを見ると、
 幅が一間ぐらいあるような大きな岩があるさかい、そいつをちょっと小脇にかいこんで」
△「気ィつけてものを言えよ、お前。……幅が一間もあるような岩が、小脇にかいこめるかいな」
O「あんた知らんさかいにそんなこと言うてんねん。それが瓢箪岩というて、
 真ん中のところが細うにこうなって……」
△「ようそんな都合のええ岩があったな、それ」
O「そこをこう小脇にかいこんで。その岩をちぎっては投げ、ちぎっては投げ」
△「岩がちぎれるか」
O「出来立てや」
△「餅やがなまるで」
O「山賊連中、こぶだらけになって逃げてしもた。ホッと一息ついてるところへ、
 一難去ってまた一難ちゅうやつや。向こうのほうにパアッと土煙があがった」
△「そら何やえ」
O「丈が一丈五、六尺もあろうという大きな猪が、八つ股の角を振り立ててこっちへ飛んで来まんのやがな」
△「……あのな、猪に角はないねん、なァ。総じてこのキバのある獣には角はない。
 角のある獣にはキバはないちゆうねん。猪にはキバがある」
O「キバや。キバや。八つ股のキバ」
△「阿呆などと言いないな。鹿の角みたいなキバがあってたまるかいな」
O「とにかくこうキバを振り立てて、こっちへ飛んで来まんねん。
 こんなもんにひっかけられたら生命がない。隠れるところがないかいなぁと思たら、
 松の木があったさかい、その上へこうスルスルと上った。猪も考えてまっせ。
 この上へ上りやがったなてなもんで、そのキバで木の根もとを、グッグ、グッグ、こうほじくりだしたんで。
 木がグラグラ揺れまっしやろ。……こんな気のもめる話はないで」
△「なんやお前、洒落ばっかり言うてるのやがな」
O「振り落とされたらかなわん。身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれというやっちや。
 ポーンと飛び下りたら、ちょうどあんた、猪の背中ヘパッとまたがったがな。
 見たらあんだ猪に首がないのや」
△「なんでやいな」
O「逆さまに乗ってんね」
△「そら首はないわな」
O「しっぽがこう目の前にある。そいつをこう、つかんで……」
△「あの、猪の尾というたらな、あれ短いもんやねん、あれ。両手でこんなことでけへんのやさかい」
O「だんだん延びてきて」
△「ゴムやなあ、おい」
O「ほいで手が滑ったんでんねん。慌てて又つかみに行く拍子に、手がそれて股ぐらヘサッとこう手が入った。
 ほなさわったもんがある」
△「何や」
O「金玉や」
△「……そらまあ人間でも猪でも同じようなとこにぶら下がってるわなあ」
O「わて考えたな。人間でも畜生でも急所にかわりはなかろう。こいつを締めあげたら、
 猪も往生するに違いない。これは良えもんが手に入った。
 天からわれに授かる金玉、かたじけなしとおし頂いて」
△「阿呆やがな、お前。しょうもないもんおし頂きないな、そんなもん」
O「全身の力でウーンと締めあげると、さすがの猪、急所の痛手に耐えかねてバッタリこけたがな。
 息を吹き返したら面倒なと、エエ、この前足と後足をつかんで、眼よりも高くこう差し上げ……」
△「あのなア、その猪、一丈五、六尺あるんやろ、おい。
 そんな大きい猪の前足と後足に手が届くかいな」
O「あんた知らんさかいそんなこと言うてんねん。この猪が猫背の猪でね。こういうぐあいに一丈……」
△「ようそんなうまいこと言うなあ、お前」
O「そばにあった岩ヘバーンとぶつけると、はずみはおそろしい。腹の皮がツーッと裂けたらあんた、
 ちょうど臨月やったとみえてね、中に子供が入ってたんで。
 ゾロゾロ、ゾロゾロ子供が出てくる。数えてみるとシシの十六匹も入ってまんね。
 それが親の仇、尋常に勝負、勝負と、このやわらかいキバであんた、わたいの足のかかとのあたりを
 コチョコチョ、コチョコチョとこう突つく。こそばいのこそぼないの」
△「ほんまにええかげんにしとけよ、お前。その猪、どないして殺したんや」
O「そらあんた、きんを締めあげたんでんがな」
△「ほな、それは雄やわなあ。その猪は」
O「……へえ。オンですわな。あんまりメンにきんはおまへんわな」
△「ほな、オンの腹からなんで子供がゾロゾロ出てくるねん」
O「さあ、そこらが畜生のあさましさ」
△「おのれのほうがあさましいわ、もう。そやさかいもうお前の話は、しまいにイヤになるちゅうねやがな」
O「……ほなあんた北海道へ行た時の話」
△「もう、北海道でも九州でもええちゅうねん」
O「いやいや、これはほんまだっせ。これはわたしはもう、北海道は詳しいんで」
△「前にもお前そんなこと言うてたけど、行ったことぐらいはあるのんかい」
O「行だことどころか、しばらく向こうに住んでたんでっせ」
△「へえ、……寒いとこやそうななあ」
O「寒いてなもんやおまへんで。痛いちゅうんでんな。向こうの冬の朝やみなは……、
 冬が来てね、もっと寒い北の国から冷たい風がサーッと吹いてきたら、
 もうあんた何もかも一ペんに凍るのやさかい」
△「一ぺんに凍るちゅうと」
O「そら田圃の水なんか見てる間に、パリン、パリン、パリン。ピン、ピン、ピン。ピーン、
 ……ピシーッと凍ってしまいまんねやがな。そやさかいあの鴨という鳥がね、あれがこう田圃へおりて、
 ドジョウやなんか食てまっしやろがな、こいつが逃げる間がない」
△「逃げる間がないちゅうたら」
O「ああ、これは氷が張るようなぐあいやなあと思てる聞にもうピシッ、ピシッ、ピシッ、ピシーッと
 凍ってしまいまんね。生きたままこう足が動かんようになる。
 そやさかい向こうは鴨猟やとか、鴨狩りとか、あんなもん鉄砲もなんにも要らんねん。
 あんな楽なもんはおまへんのやで。稲や麦を刈る時の鎌を一丁持って行て、動けんようになってる奴を
 つかまえて、ザーッ、ザーッ、ザーッ、ほんまの鴨刈りや」
△「ほんまかいな、お前そんな手づかみにするようなわけに……」
O「いきまんねや、それが。そやさかい脂の乗った大きい、上等の良え鴨ばっかりをこう取っていきまんねん。
 やせた小さい、そんなクズの鴨はほかしときまんねん。
 そのまたクズの鴨ばっかりを専門に拾い集めてる商売がある。
 これがあんたカモクズ拾いちゅうやつや」
△「そらお前紙屑拾いや」
O「なんでもかめへん、みなこう取ってしまうとな、あとはもう足だけが残ってまんねん。
 もう田圃の中にこう足が二本ずつ、ニュッ、ニュッと稲の刈り跡みたいにな、
 ……ちょっとこう、残ってまんねん。冬の間はこれこのままです。
 春が来たら此処からこう、また芽をふき出して、こうずーっとまた鳥がでけまんねん。
 カモメというのはこれのことや」
△「……ようそないうまいことウソつくなあ、お前は。鴨の足から芽がふいてカモメかいな」
O「まあま、それぐらい寒いちゅうてまんねやがな。そら雪なんかすごいで」
△「ああ、そらすごいかもわからんなあ」
O「もう家の軒よりあんた、雪のほうが高いのやさかい外へも出られんようになる。
 なあ、そやさかい、もうじき大雪が降るなあちゅうのは所の人はわかりまんねん。
 そうなるとな、家の壁に穴をあけて、向かいや近所にもみな穴をあけまんね」
△「なんでや」
O「話だけなとしたいちゅうわけで、青竹の太いやつの節を抜いてな、その穴から穴へ通しまんねや。
 隣や向かいのほうへな。ほな、話がでけまっしゃろがな。
 朝になるちゅうとな、向かいのほうへ向けてこう大きな声で、〝おはよーう″とこう言いまんねん。
 ほな、向かいからまたこっち向いて、〝おはよーう″言うて、……お互いに無事で居るということを
 知らせ合いまんねん」
△「うん、なかなか良え話やがな」
O「ところがもう少々寒さがきつうなってくると、こんどはこのおはようが凍りまんのや」
△「……お前今何を言うたんや」
O「おはようが凍りまんねん」
△「人間の声が凍ったりするかいな」
O「それが凍るさかい恐ろしいがな。こっらからおはよーうちゅうたやつが、向こうへ届かんと、
 その途中でピシャッと凍ってしまいまんのや。
 でまた、向こうからおはよーうちゅうたやつが中途でピシャッと、
 ……両方からのおはようがこの真ン中で凍って、おはようの塊ができまんねん。
 ほな、声が往き来せんようになりまっしゃろ。ははあん、つまったなあてなもんでな、
 そうなったら棒を持って行って、こいつでこうコーンとつくとな、おはようの塊が、
 こっちの家ヘゴロゴロ、ゴロゴローッとこう飛び出してな、囲炉裏のそばへ転がってくると、
 そのぬくみで溶けだして、おはようとこう、……こっちでもおはよう……おはよう、おはよう、
 おはよう、おはよう、おはよう、おはよう……やかましいのなんの」
△「おのれのほうがよっぽどやかましいわ。人間の声がなんで凍るねん、それ」
O「まあまあ、それぐらい寒いちゅうてまんのやがな、あんた。そらあんた、火が凍るのやさかいな」
△「……ほんまにええかげんにせえよ、お前。火が凍るわけがないわ」
O「それが凍るさかい恐ろしい」
△「あんなことばかり言うてんのやがな」
O「わたい向こに居てる時な、夜中に火事やあちゅう騒ぎや。わて、火事好きやがな。
 こっちの火事はどんなぐあいかいなと思て、寒いのにあんた、オーバーやなんか着込んでパーと
 外へ飛び出したん、ええ。ほな、火の手が見えてまんねやがな。するとあちこちで、
 ジャッ、ジャッ、ジャッ、ジャッちゅうて……」
△「なんやそのジャッちゅうのは」
O「半鐘が鳴ってまんのやがな」
△「半鐘ならジャン、ジャーンとこういきんかいな」
O「さ、このへんならジャン、ジャンや。おはようが凍りまんのやで、向こうは。
 ……ジャンかて凍らなんだら義理が悪い。ジャンが凍って、ジャ、ジャッ。
 消防ポンプが、ウッ、ウッ、ウッ、ウッ」
△「サイレンまで凍るのか」
O「凍りまんねん。ほいであんた、分の厚い池の氷をバンバーンと割ってな、ホースをそこへ突っ込んで、下のほ
 うは水がありまっさかいな、それをその火事に向かって、ホースでシャーッと水をかけまんのやが、
 その水が火事のそばまできた時分には、ピシャッと凍りまんねん。またこっちからかけた水がピシャッ。
 ピシャッ、ピシャッ。ピシャッ、ピシャッ。四方八方からのこの水が凍って、火事が氷づけになりまんのやな、
 火事が凍って……。そやさかいメラ、メラ、メラ、メラーと燃え上がったまま火事が凍るんだ。
 こう……、サァーとこんな格好でこう、……こう火事が目ェむいて」
△「火事が目ェむくかいな」
O「こういう格好で、こ、凍ってしまうん、ええ。きれいでっせ、これは。
 これをどないすんのやというたら、のこぎりで引いて小そうして、池や沼へ捨てに行くちゅうさかいな、
 わて、おくなはれ言うたんや」
△「そんなもんもろてどないするのや」
O「こっちへ持って帰ってきたら銭もうけができまっせ。
 何しろきれいなもんやがな、見せ物にでもなるしなあ。
 このごろはやってるあの前衛の生け花やとか、彫刻なんかの良え材料やと思たしなあ。
 第一これをちょっと、細こうに切ったらそれでまた売れますがな」
△「何に売れるねんな」
0「火の素とかなんとか名前をつけて、インスタントのたきつけにしてもらいまんのやなあ。
 この火の素をカンテキヘこう放り込んでもらいまして、熱湯を注いでもらいますと、ボォー……」
△「ようそんな阿呆なことを考えたなあ、お前」
O「そやさかいくれェちゅうたら、欲しかったら持って行けちゅうさかい、枝ぶりの良さそうなところを
 のこぎりでこう挽いてね、運ぼうと思たが、あんたの前やけども、火事の凍ったやつは重たい」
△「知らんがな、そんなこと、わしは」
O「運ぶものがないン。そこへお百姓が牛をひいてきたさかい、牛の背中にこいつを積んで、
 鉄道便のあるとこまで運びかけた。途中であんた、鉄工所の前を通ったんでんな、ええ。
 鍛冶屋の、熱い空気がこう流れてきた。牛の背中でその火事が溶けだしたさかいえらいこっちゃがな。
 牛があんた、生きたままこうビフテキになりかけましたんやがな、ポォーと……。
 こら可哀そうなちゅうんでバケツの水をくんできて、なんぼかけてもこの火が消えんわ」
△「なんで消えんねん」
O「よう言いまっしゃろ。焼けウシに水ちゅうて」
△「そらお前、焼け石に水やがな。……火事が凍るわけがないやろ」
O「まあ、それぐらい寒いちゅうてまんのやがな。何しろ小便が凍るのやさかい」
△「小便ぐらい大阪でも凍るわいな。いつやったかしらん、わしはお前、風呂へ行きしなに立ち小便して、
 帰りしなに自分の小便で滑ってこけたことがあるがな」
O「そんな生易しいのんと違う。向こうはあんた、出るはたから凍りまんのやがな」
△「出るはたから凍るちゅうたら」
O「ジャーツと出たらもう凍ってまんねやがな。そやさかい向こうはな、どんな田舎へ行ったかて
 小便たんごてなものはあれしまへんのやで。あの、向こうは小便棚というて棚が吊ったあるのや」
△「棚が」
O「さあ、そこに金槌と釘抜きと繩が置いてある」
△「どないするねん」
O「壁へ向かってとにかく小便をしたらよろしいねん。ジャーッと出たらもう凍ってまんのや。
 ほなこうつかえて後が出まへんやろ。そこでこの金槌を取り上げてこいつをコーンとこういきまんねん。
 ほなポロッとこっちへ落ちるんだ。ほなまた次のんがシュー。。コーン。シューッ。コーン。シューッ。
 コーン。わりとおもろいもんだっせ、これもやってみたら、へえ。もう調子がついてくるとな、
 歌なんか歌いながら、シューッ、コン。……一ぺんなんかあんまり調子がつきすぎて、根もとのほうを
 カーン。……痛かったのなんの」
△「ええかげんにせえ、お前、そんな」
O「ほな、こっちにガラスの棒みたいなもんがこう仰山でけまっしゃろ。こいつをこの繩で束ねて
 棚へ乗せといたら、肥汲屋がこれを集めに来まんのやがな。そやさかい向こうは小便なんか、
 一束、二束というて勘定をするねん」
△「フーン。……で、その釘抜きはどないするのや」
O「アッ、これは男は要りまへんねん。女も同じようにシューッ、コンとやるけどな、
 女はちょっとこのあとへ残る場合がある。そこをこの釘抜きで引きずり出す」
△「……ようそんな阿呆なことを言うてるな、この男はもう。
 しかしお前はまあほんまに、次から次へようそれだけ阿呆なウソがつけるなあ、お前。
 まあそこまでウソをつくんなら、もういっそのこと日本一のウソつきの名人にでもなったらどや」
O「わたいは日本一のウソつきでんがな」
△「何を言うのやいな。まあまあ、お前は大阪一のウソつきかもわからんが、日本一は他に居てるがな」
O「そんな奴が居てますか」
△「知らんかお前。この大阪をまっすぐ南へ二十里ほど行たら嘘つき村という村がある。
 そこに鉄砲勇助という男が住んでるねん。こいつが日本一のウソつきや。
 お前がそこへ行てこの男とウソの勝負をして、こいつに勝ったらまあまあ日本一のウソつきやと
 言うてもええが、そら、ちょっとお前のてこには合わんで」
O「そんなことおますかいな。よーし、ほなわたいその鉄砲勇助ちゅう奴と一ペん試合をしてきます」

 気楽な男で。大阪を南へ南へ、二十里ばかりやってまいりました。

O「このへんやが。ちょっとお尋ねします」
口「はい」
O「嘘つき村ちゅう所はこのへんにおまへんやろかな」
口「アーア、嘘つき村ならそこの四つ角をな、こっちのほうへずーっと曲がって
 まっすぐ行ったらそやけど……、あんたがそこへ行きなはるのか」
O「へえ。ちょっと用事が」
口「……どんな用事があって行くのか知らんけども、あんまり向こうへは行かんほうがよろしいで。
 あの村へ入って無事に出てきた奴はないちゅうのやさかいなあ。
 もうこのへんの者はあんまり付き合いをせんようにしてまんねん」
O「いやいや、私は大丈夫で。へえ、えらいおおきにありがとう。
 エー、ああ、ここをまっすぐ行けちゅうたな。
 ……アァ、なるほど、〝これより嘘つき村〟てな棒杭が立ったあるがな。
 ……ほう、わりと良え家が並んでるなあ。はあ、どこが鉄砲勇助の家やわからんな。
 このへんで聞いてみたろか。エー、ちょっとお尋ねしますが」
甲「はい」
O「鉄砲勇助はんのお宅をご存じおまへんやろかなぁ」
甲「ああ、向かいや」
O「ああさよか、おおけにありがとう。これは良えとこで聞いたな。こんにちは」
乙「はい」
O「鉄砲勇助はんのお宅はこちらですか」
乙「隣やで」
O「アァさよか、…筋向かいや。……こんにちは」
丙「はい」
O「鉄砲勇助はんのお宅はこちらですか」
丙「十軒ほど向こうや」
O「……あかんわ、こら。……ここは嘘つき村やねん、ここは。こんなもん一日聞いて歩いたかて
 教えてくれるわけがないがな。困ったなあ、えらいことしたぞ。
 表札なんか出てる家、あれへんしなあ。どうもならんな。こら
 えらいとこへ飛び込んでもたで。ああ、あんなとこに子供が居とおる。
 子供は正直ゃちゅうさかいなあ、焚火をしてるなあ、あいつに聞いたろ。坊ン、ちょっと尋ねるがな」
子「なんや、おっさん」
O「あの、鉄砲勇助はんちゅう家知らんか」
子「ああ、鉄砲勇助ゃったらウチのお父つぁんゃで」
O「こら、ええ子をつかまえたなあ。そうか。いや、実はわしは大阪一のウソの名人や。
 鉄砲勇助は日本一のウソつきやさかい、ウソの試合をしようと思て来たんやが、お父つぁん居てるかい」
子「留守や」
O「ああ、留守か。どこへ行たんや」
子「いや、昨日な、急に電報が来たんや」
O「電報が、どっからいな」
子「いや、富士山がとけそうやさかいじきに来てくれいうて。
 そらえらいこっちや言うてな、線香を持って突っぱりに行たで」
O「……やるなあ、こいつは。ほな、お母はんは」
子「お母はんも留守やねん」
O「お母はんどこへ行たんや」
子「竜宮の乙姫さんがな、洗濯物がたまって困ってんねン。ちょっと手伝いに来てんかあいうて来て、
 ほいで今朝から手伝いに行たんや。なんやったらおっさん、竜宮へ後迫いかけて行くか」
O「ウーム、……子供にしては、なかなか筋が良えわい、お前今に立派な者になるぞ。
 そうか、ほいでひとりで留守番してんのンかいな。焚火して芋でも焼いてるのか」
子「いやいや、今腹が減ったさかいなあ、ちょっと割り木を食べよかいなと思てな、
 五、六本、今コーンガリと、こう焦げてきた。ちょっとおっさん一本食えへんか」
O「いやァ、まあまあま、ええわ」
子「そない言わんとこれぐらい焦げたところがうまいで、ちょっとこのマキ食べてみ」
O「いやあの……さいぜんわしゃタドンをな、真赤にしたやつ、五、六個食てきたさかい腹が大きいねん」
子「タドンと割り木とはまた味が違うさかい、どや、遠慮せんと」
O「いや、もうええ、もうええ。……子供でこれやったらもうどんな目にあうやわからんなあ。もう去ぬわ」
子「去ぬか。……ああ、おっさんそっちへ行たらあかんで。そこに狂犬が居って食らいつきよるさかいな。
 狂犬に咬まれたらえらいことになる」
O「狂犬が居てるのん。ほな、あのこっちの道から」
子「アァ、そのへんはな、ちょっと毒蛇が居てんのや。山のほうへ行たらオオカミが出るで。
 やあ、そっちへ行たらそらもう道がもう行き止まりになって……、ウワ。
 ハッハッ……びっくりして逃げてまいやがった。おもろいなあ」
勇「おい。何をワアワア言うてんねん」
子「ああ、お父つぁん、お帰り」
勇「お帰りやないがな。何をワアワア」
子「いやあ、今大阪からな、大阪一のウソつきの名人やとかいうのが、
 鉄砲勇助とウソの試合がしたいとか言うて来たんやで」
勇「ほう。ほいでお前どない言うたんや」
子「で、お父つぁん今留守や言うたんや」
剪「こら留守の時に留守や言うたらいかんがな。留守の時は居るとこない言うのやがな。
 居る時に留守と言わないかんがな。今時分からそんなことでは、将来、ろくな者にならんぞ、お前」
子「ほいで、どこへ行たんや言うさかいな、富士山がこけそうなさかい支えに行たんや言うたら、
 お母はんは言うさかい、竜宮の乙姫はんのとこへ手伝いに行たんや言うたらな、
 子供のくせになかなか良えこと言う、筋が良え言うてほめとおったで。
 ほんで何してんねん言うさかい、今制り木を焼いて食おう思てんねや、おっさんも食えへんか言うたら、
 こらとても子供には勝てん、こんな子供の親やったらどんな目にあうやわからん言うてな、
 びっくりして逃げかけたさかいな、そっちへ行ったら狂犬が居るで、こっちへ行ったら毒蛇が出るわて
 言うたら、ウロウロしてダァーッと慌てて逃げて行きよった。
 逃げて行きしなに財布を落として行きやがって……開けてみたら銭が一杯入ったあんねん」
勇「そういうものは子供が持ってたらいかん。こっちへ貸し」
子「こらウソや」
勇「おい、親にまでウソをつく奴があるかいな。ちゃんと留守番してえよ」
子「アアッ、今帰ったところやのに、また出て行くのんか」
勇「ああ、ちょっと買い物に行くのや」
子「連れて行ってえな」
勇「いやいや、お前らがついてくるとこやない」
子「何を買いに行くねん」
勇「桶を買いに行くのや」
子「手桶か」
勇「大きな桶じゃ」
子「風呂桶か」
勇「そんなもんやない。もっと、もっと大きな桶や」
子「フーン。ほな、この家ぐらいある桶か」
勇「そんなもん、ここらへんの家とは比べもんになるかい。この家やらこの村やら、もっともっと大きな桶や」
子「大きな桶やなあ」
勇「ああ、もう日本でもゴソッと入るような桶じゃ」
子「はあ、えらいもん買いに行くのやなあ。そういうとさいぜん、わし珍しいもん見たで」
勇「珍しいもんてなんや」
子「竹藪へ入って行たら目の前の土が動いてな、ポコッと竹の子が顔を出したんや」
剪「そんなもん、何が珍しいねん」
子「それが、見てる間にずんずんずんずん延びてな、近所の竹を迫い越して、
 どんどん、どんどん天へ上って行て、雲を突き破ってズーッと延びて行くのや。
 どこまで行くのやしらんと思たら天の行きあたりまで行たんやろなあ、突き当たって、
 またこう下へ向いてズーッ。また雲の間からこう下りてきて地面へついたかと思たら
 また上へずんずん、ずんずん、ズンズン雲を割って上へ上って、しばらくしたらまた下へ向けて」
勇「おい、そんな良い竹がどこにあるねん」
子「これぐらいの竹がなかったら、困るやろ」
勇「なんでやいな」

子「お父つぁんの買いに行く桶の輪にしますのや」

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February 21, 2008

勇助。

2008_2_21kokin

夜中、屋台前に並んで待っている人を見ると不思議でしょうがない。
早く、帰ればいいのに。。。
でも、「すたみなめし」ってなんだろう??

鉄砲勇助の詳細が不明なので、意地になって総合図書館に行ってみると
江戸では前半が嘘つき弥次郎、後半が嘘つき村と別れているんですね。
上方では鉄砲勇助で一つの演目なんです。
私が聞いたざこばの物は前半のみ。
枝雀も前半のみ・・・・な~るほど。。。

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February 17, 2008

すべり台。

2008_2_17dai

空港のそばのちょっとした公園に孫を連れて行きましてん。
すべり台の上から孫を支えている手を離したらでんなぁ
2歳の孫には傾斜が急だったんでっしゃろうなぁ~。
滑ったあと、勢いよう2キロ先まで空中を飛んで行きよりましてん。
頭打たんでよかったわぁ~~。。。
ビックリさせよってからに・・・。。。(笑)。
せやけど、孫が空中で200回転したあと着地し、天上天下唯我独尊って叫びよりました。
天災でんなぁ・・・ちゃうわ、天才でんなぁ。。。

ちゅうわけで今週の朝ドラは鉄砲 勇助 でおます。
ウソのお話ですわ。
ウソで固まった男が日本一のうそつきと対決する??
わてはざこばはんのレコードしか聴いたことがおまへんのや。
それも、えらい話を端折ってある分・・・適当やったでっせ。
文献が手元におまへん、こらあかん、見つからへん・・・。
はてなの茶碗が先やと思うてたのに間違えてもうた・・・。

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February 15, 2008

お金がないので、焼き芋を作る。

2008_2_15imo

パソコンの上に置いてあるステレオからラジオの音が聞こえなくなってしまった。
単体チューナーはあるから繋ごうかと思ったが、録音機器のMD単体コンポも古く
ソニーのMD機器と実に相性が悪い。
借金して買おうかと思い、コジマ電気に行ったら、新しい機器はもうMDを搭載していない。
HD搭載になっており、コンポだけでは役に立たず、携帯する為の機器を別にまた購入する必要がある?
あの小さいのは勘弁なのだ。
老眼ではディスプレイの文字が小さすぎて見えないのだよ。
昔からステレオは単体コンポの集合で使っていたけど、もう値段で折り合わなくなってしまった。
小さなステレオコンポが安く買えるのね、古いタイプを買うか。。。

MDが終焉を迎えつつあるのに携帯用にMD機器を追加したお馬鹿ちゃんは行き場を失ってしまった。

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February 13, 2008

はてなの茶碗。

2008_2_13cat

「はてなの茶碗」

非常に良い演目だと思います。
私はこの話、大好きです。
とても落語らしく、オチも実に良いと思います。


  このごろは、古いものがずいぶん見直されるようになりまして。まァ落語なんかもその
 一つですな。エー、若いお客さんには新しい話が喜ばれるかなあと思うと、そうでもない
んで。皆さん古い話のほうが聞きたいとおっしゃる。新作落語なんか案外人気がよりまへ
ん。六十年ぶりで復活したてなことになると、それひとつ聞きに行こか、てなことになっ
て………なんかこう古いものがえらい見直されて、手作りの味やとか何とか言うて、まァ
美術品でも骨董品でも、このごろはえらい値打ちですが、その値段というものが、誰が、
何を基準にあの値をつけるのか知りまへんが、もう一つ得心のいかんことがようあります。
 展覧会やなんかに行ってみると、おんなじような色目で、同じ模様がついてて、おんな
じような格好した壷が並んでて、こっちの大きいほうに二十万という値がついて、横手の
小さいほうに四十万てな値がついてる。
 「どういうわけでこれ、こない値が違いまんねやろな」
 「どういうわけて……」
 「なんで二十万と、四十万……」
 「そらあんた、こっちには二十万円の値打ちしかないさかい、二十万や。こっちは四十万
の値打ちがあるさかい、四十万円」
 「けどあんた、おんなじような格好で、おんなじような色してまっしゃろかな、これ。ほ
いで、この大きいのんが二十万円で、なんでこの小さいのんが四十万」
 「あんた、焼き芋かなんか買うてんのやないのやさかいね。こんなもん大きい小さいで値
打ちのつくもんやないねん。こっちは小そうても四十万円の値打ちがある。そっちは大き
いても二十万円の値打ちしかないン」
 「そやさかい、どこが四十万や言うて聞いてまんねん」
 「あんた、こんなもんな、ちょっとぐらい見たんではわからん。この四十万円の壷、しば
らくジィーッと見ててみなはれ。ほな、模様がこう、ズーッと浮き上がって追ってくるよ
うな気がしまっしゃろがな」
 「これ………ああ、なるほど。ほう、そない言うと、こうジーッと見てたらこの模様がズ
ーッと……。なるほど、やっぱりこれ四十万円ですな、これは。へえ、やっぱりこっちは
大きいけどねえ、この二十万円のん、何とのう品かない。これはやっぱり二十万でんな
あ」
 なんか言うてたら係員が来て、
 「すんまへん、ちょっと値札まちごうてましたんで」(卜、置きかえる)
 「………何が浮かび上がって追ってくるのやいな。やっぱりこれが四十万で、こっちが二
十万円やないか」
 「……そういうと」
 「何がそういうとや」
 まあまあこういうもんやろうと思いますがなあ、これ。
 「………えらいことしたなあ。いいやいな、由さんとこ、あすこの家の持てあましてた古い
道具、おじいさんの使うてた、手文庫やとか、結界やとか、あの机やら火鉢やら、良え値
で売れたんやて、こないだ。ああー、あんなんうちにかて、ぎょうさんあったんやがな。
宿替えの時、みなあれ捨てたり人にやったりして、みんな放ってきたがな。えらいことし
たなあ。何か残ってえへんか、うちに、古いもん………ええ。おばあちゃんが居てるて……
あれは古いなあ。八十三やけどなあ。誰ぞお婆ン、二十万ほどで売ってこい」
 てな、まあひどいことになるもんですが。なかにはまた、この妙なものを承知で集めて
喜んでる人があります。あれも集めてみると、マッチのペーパーでもなんでも、しょうも
ないもんでも集めるとおもしろいもんで、
 「社長、まただいぶ集まったそうで」
 「ウム。このところしばらく、珍しいものを見せなんだなあ。久しぶりに今日は見てくれ
るか」
 「はぁ。だいぶんご無沙汰してましたんで、また何か見せていただけるやろと、楽しみに
してまいりました」
 「アハッ、見てもらおうかな。このへんのところなら、まあ珍しいと思うが」
 「へえー、これはまた細長い竹の杖。杖でんなあ、こらなんでんねん」
 「これが君、珍しいな。水戸黄門が日本国中を、ついて歩いたという杖や、これは」
 「これが水戸さんの杖でっか、これ。……こんなもんどこにでも、落ちてるように思うけ
どなあ。なんぼしました」
 「安いなあ。君、これが二十万」
 「二、二十万、これが。へえー。これは何が入ってまんねん」
 「開けてみなさい」
 「中は、綿が敷いてあるだけで、何も入ってえしまへんな」
 「よく見てみたまえ、入ってるから」
 「何が入ってまんねん。……なんぽ見ても見えしまへん」
 「ノミの金玉のハッ裂きが入ってる」
 「……ノミの金玉の八分の一でっか。どう見ても見えまへんなあ」
 「見えんところが値打ちじゃ」
 「ああ、さよかなあ。この丸いもの、これはなんです」
 「これが、君、珍しい。象の卵やなあ」
 「象の卵。象の卵てなものはこの世にないんとちがいますか」
 「あったらおもしろないがな。ないところが値打ちじゃ。世界中でこれ一つ」
 もうこないなったら手がつけられしまへんさかい。
 まあまあ、ああいうもんでも、エー扱う商売人。この、お店もやはり場所によりますな。
京都やとか奈良やとか、昔都のあったようなとこがよろしいなあ。奈良の骨董屋さんとか、
京都の道具屋さん、鎌倉の古美術商かなんかいうと、ありがたみがあるようで、同じ良え
お店でも潮岬の道具屋さんいうたら、なんやありがたみがおまへん。そら潮岬にかて、良
えお店があってええ理屈ですか、やっぱり土地柄てなものがあるようで。
 これは京都のほうのお話ですが、ご承知の京都の、あの清水の観音さん。清水さんに音
羽の滝という滝がございますな。エー、遠目から見たら細い、チョロチョロとした滝です
が。先年、わたしあの下でこう杓で受けてみたら、やっぱりあの圧力はかなり強い。あん
なチョロチョロ流れてるような滝ですけど、やっぱり腕がこうなる……ぐらいの力があり
ますな。小さいが名代の滝で。あの滝の前に茶店がございます。そこへ腰をおろして、お
茶を飲んでたのが、年の頃、五十五、六。地味な結城の対を着まして、上品な身なりをし
た人で。お茶を飲んでたんですが、飲み終わった後で不思議そうな顔をして、中をのぞき
込んだり裏返したり、こう日にすかしてみたり、せんど首をひねってたが、「はてな」と
言うと茶碗をそこへ置いて、茶代払うて出て行った。隣でおんなじように、お茶飲んで休
んでたのが、電気のなかった時代、行灯に入れる油を売って歩く、かつぎの油屋さん。荷
を担いで油を売って歩く商売ですな。
油「おやっさん」
亭「なんじやいな、油屋さん」
油「ぼちぼち出かけるわ」
亭「まあ、もうちょっとま、休んで行たら」
油「いやいや、こんなとこで油売ってても一文にもならん。出て行て油売らんならんのや
 さかい」
亭「……おもろい商売やな、ほんに。どっちへまわっても油を売るか。ははは。まあまあ、
 しっかりおかせぎ」
油「頼みがあるんやがな」
亭「なんじやいな」
油「こうやって荷ィ担いで町ながして歩いてると、のどが渇く。で、得意先で湯でも水で
 もおくなはれと言うたら、そら気ィよう汲んではくれるんやが、この通り手が油だらけ
 や、ちょっとさわっても、茶碗に油がつく。これがちょっと水で洗うたぐらいでは落ち
 んがな、気がねな。自前の湯呑を持って歩いてたら、これへおくなはれと言うたら遠慮
 なしに茶でも、湯でももらえるやろ。自分の湯呑を持って歩きたいと思うねん。あんた
 とこぎょうさん茶碗があるやろがな。その要らんやつ、悪いんでええさかい一つ分けて
 えな」
亭「なんじゃいな、何のことやしらんと思たら、おお、そんなやったら持って行きなはれ。
 気に入ったんがあったら」
油「へえ」
亭「銭もなんにも要りゃせん。長年のなじみやがな。こんなもん、うちは毎日のように壊
 れるんやさかい。持って行きなはれ、上げる」
油「タダでくれるのん。こォらすまんなあ。ほんならあつかましいけど、ほな、これもろ
 て行くわ」
亭「ああー、そら置いといて。そら、ちょっと置いて、こっち側のを上げる。この中から
 どれでも撰って行きなはれ」
油「おんなじことやろ」
亭「おんなじことでも、それはあかんね。こっちのんやったらタダで上げるさかい、持っ
 て行きなはれ」
油「なんでこれがいかん」
亭「なんでも、とにかくそれは置いといて。お前はん、知ろまいけどな、今この茶碗で、
 ここへ腰かけて、お茶飲んでた人。この京の衣ノ棚に住んでる、茶道具屋の金兵衛。人
 呼んで茶金さんという有名な道具屋や。京一の道具屋ということは、日本一の道具屋や
 なあ。どこか気に入ったんかしらんが、さいぜんからしきりに、その茶碗をこうひねく
 ってる。中のぞき込んだり、裏返したりすかしたり、『はてな』ちゅうて置いて行きよ
 ったんや。あの茶金さんか指をさして、『この品は……』と言うただけで、黙って十両
 の値打ちがあるちゅうぐらいの人やで。それがあれだけひねくりまわしたんや。ひょっ
 としたら千両ぐらいの値打ちもんやわからんさかい、これは上げられん。ウム。こっち
 のんならどれでも上げるさかい、持って行きなはれ」
油「……なんや知ってたんか、アハツ。わしも茶金さんがえらいひねくりまわしてるさか
 い、ひょっとしたら掘出物やわからん、うまいこと言うて持って行たれと思て」
亭「悪い人やな、これ。そんなこと考えててもろたら困るがな。これは上げられん。こっ
 ちのんならどれでも上げるさかい」
油『ウーン、そんなこと言いないな。なあ、バレたらしゃあない、改めて頼む。……ここ
 に小判が二枚ある。二両、これで身代限りやねん。これでこの茶碗わしに売ってえな」
亭「せっかくやけど、この茶碗、二両や三両ではよう売らん。一つまちごうたら千両代
 物という品やないかいな。そら堪忍してえな」
油「そんなこと言うない。おい、お前はんかて、これ今日茶金さんが来なんだら、なんの
 こっちゃわからへんやろ。あした割ってしもたかもしれんで、こんなん。こんな安茶碗、
 二両になったら御の字やないかいな、ええ。そんな欲の深いこと言いな」
亭『いや、まあ、そらまあ、そやけども。……これが千両になるやら五百両になるやら、
 また一文にもならんやそら判らん。しかし、わしも運だめしや。こらちょっと取っとき
 たいさかい、こら堪忍して」
油「いや、もっとあったら、もっと出すのやがな。わしの精一杯、もう、あるだけ出して
 頼んでんのやないかいな、ええ。二両になったら御の字やろがな。お前はん、……いや、
 そやさかい……そうか。ほなもうええわ。あきらめる、あきらめる。もうええ。そのか
 わりお前にも儲けささへんで。この茶碗ここへ叩きつけて割ってしもたるのやさかい」
亭「おい、おい、おい。そんな無茶しないな」
油「無茶は承知やがな。人がこれぐらい頼んでんのに、お前、欲の深いこと言いやがって、
 ええ。そやないかい、ウムー何……願うて出る。ああ願うて出え、願うて出え。出ると
 こへ出たかて、わしの手はこの通り油だらけや。つるッとすべって、粗相で割リました
 と言うたら、申し開きは立つねん。さあ、二両で売るか、割ってまうか、どっちやい」
亭「こんなむちゃな奴にかかったらかなわんな。そんな殺生なこと言いないな。おい。一
 つまちごうたら千両……いやッ、待ったァ、オウ、ちょっと待った、待った、待った。
 売る、売る、売る。割られたら、元も子もないがなもう。こんな奴知らんわ、ほんまに。
 売るけど……お前、二両やなんて……。儲かったら、分でも持ってこなあかんで」
油「みなまで言うない。俺はそんなケチな人間やない。儲けたら必ず、ここへ挨拶に来る
 さかい。ほんならこの茶碗、確かに買うたで」
と、乱暴な奴があるもんで、強奪するように茶碗を持って帰りますと、どこで手回しまし
たか古びのついた桐の箱へ、鬱金(うこん)の裂(きれ)に包んでこの茶碗を入れます。ちょっと気の利いた
更紗の風呂敷で包みますと、自分も前垂れの一つも掛け替えて、どっから見ても、道具屋
の手代というような格好で、茶金さんの店へやってきた。
油「ちょっと茶金さんに見ていただきたいもんがあって参りましたんやが」
番「はあはあ、主ただいまちょっと、手の離せん用事をしとおりますのやが……、エー、
 番頭の私でよければ、代って拝見をいたしますが」
油「いやあ、そのちょっとこの茶碗だけはなあ、他の人では困る。茶金さんなら五百両、
 千両とこう値打ち見てくれるんやけどなあ。……あんたはここの番頭さん、そらあ立派
 なもんや。これだけの店の御番頭さんなら、どこへ出しても恥かしない立派な商人さん
 やと思うが……これだけはなあ、茶金さんなら、千両……とかなんとか、値打ちを見
 てくれると思うが、あんたでは」
番「どのようなお品でも、一応店を預かる番頭の私が拝見をいたしまして、目の届きませ
 ん節に、また主のほうへ」
油「ああ、そうか。店の規則やというのやったら、どうもしやあない。ほんなら見てもら
 うけどな、……この茶碗見て、あんた笑たらいかんで」
番「いや、笑やいたしません」
油「いやア、笑うかもわからん。笑いやかったらボーンとどつくさかい、そのつもりで」
番「いや、決して笑やいたしません、へえ。茶碗どすかいな。拝見をいたします。……ホ
 ウなかなか良え風呂敷どすなあ……ああ、更紗もこれぐらいになると結構で」
油「風呂敷ほめいでもええ。中の茶碗ほめてや」
番『わかっております。……ウム……この茶碗どすか。これ、……お間違いおへんな。
 …………えらい折角どしたけど、手前どもでは、ちょっと目ェが届きかねますのでどうぞ、
 よそさんへご持参を」
油「そやさかい初めからお前はんでは判らんと言うてんのやがな。茶金さんに見せたらえ
 えねん。茶金さんならこれ見て、千両、五百両と値打ち見てくれるねん。お前はんで
 は」
番「いや、これは主に見せて、おんなじこっとす。……いや、いや……それなら申し上げ
 ますがな、こらなんぞのお間違いやおへんかいなあ。どこにでも転がってる、高々ハ文
 か十文の、清水焼でも一番安手の数茶碗。どこをおして、これを五百両の千両のてな
 ………いやいや、わたしかて商売人どすがな。そんなことおっしやったかてなあ……い
 や、そら、そんな無茶なことを……あっはっは、そらあんた。……あ痛ッ……何をしな
 はんねん」
油「笑たらどつくちゅうて初めから言うてるやないかい、お前。お前では判らんねん、茶
 金さんに見せたらええね。茶金さんちょっとここへ出して」
金「店が騒がしい。どうした」
油「ああ、茶金さん、旦那。あんたに見てもらいとうて来てんのに、この番頭のがきがそ
 ばから出しゃばりやがって、人の品物見て笑たりしやがるさかい」
金「……人様のものを拝見して、笑うということがあるかいな。あんたもあんたや。手を
 かけいでもよろしい。わたしが拝見をいたします」
油「あんたに見てもらや、千人力や。よう見とおくなはれや、その茶碗。五百両、千両ち
 ゅう代物やさかい」
金偏あぁ、茶碗どすかいな……拝見をいたします。………この茶碗、……フフフ」
油「あんたに笑われたら心細いで。よう見とおくなはれ」
金「……ちょいちょい、あんたのような方がお越しになる。妙なものを持ってきて、五百
 両の千両の………こっちが割るかキズでもつけたら、それを因緑にして金にしようとい
 うような………いやまあ、あんたがそうやと言うてるのやない。そういうお方もあると
 申してますのや。またそう思われてもしょうがない。こら番頭が笑うたのも、もっとも。
 どこにでも転がってる、一番安手の数茶碗。どこをおして、これを五百両の千両の」
油「あんた、そんな、箱から出しもせんと、上からのぞき込むだけてな、そんな薄情な見
 方せんと……。もっとこう裏返したり、すかしたり、のぞき込んだりして、あんじょう
 見てえな………それ。それほんまになんでもないのん。タダの安物か、それ………おい、
 お前はんぐらいの人間になったらな、世間の者は皆知ってんのやで。どこで迷惑する奴
 があるやわからんのや。ややこしい茶の飲みようさらすない」
金「ややこしい茶の飲みようとは」
油「あんた、四、五日前、清水さんの音羽の滝の前の茶店で、この茶碗でお茶飲んでたや
 ろ」
金「……どっかで見たことのあるお人じゃと思うたが、そういうとあんた、あの時、なん
 か二言、三言もの言いましたなあ。わたしのそばに座ってた、たしか油屋さん」
油「油屋さんやないわい。お前はんなあ、この茶碗で茶ァ飲んだあとで中のぞき込んだり、
 裏返したりすかしたり、せんど首ひねって『はてな』ちゅうて置いて行たんや、ええ。
 茶金さんともあろう人があんだけひねくってんねん、こらえらい値打ち物やわからんと
 思たさかい、わしや向こうの茶店のおやじと喧嘩までして、小判二枚………お前はんら
 二両ぐらい何とも思てへんやろ、油売って歩いて二両貯めようと思たら、なみや大抵や
 ないで。三年間、食うものも食わんようにして、やっと貯めた小判二枚放り出して、こ
 の茶碗買うてきたんや。なんでもない茶碗ならなんであんなややこしい真似しやがった
 んや」
金「ちょっとお待ち、ちょっとお待ちを……ああ、この茶碗どしたか、あれ。いや、あの
 時、お茶をいただいてますとな、茶がポタポタと漏りますのんで……。おかしいことが
 ある、ヒビ割れか、キズでもと思うたがなんのキズもない。うわ薬にもなんの障りもな
 い茶碗の茶が漏る。不思議なことがあるもんじゃなあ、『はてな』と言うて置いて帰っ
 たン」
油「……そんな阿呆な話ないで、おい。ほんなこれキズ物かいな、これ。えらいことした
 なあ、これ――。まあまあまあ、茶金さん聞いとくなはれ。実はなあ、わしや大阪の人
 間や。極道がすぎて親に勧当されて、もう大阪に居ることができんもんやさかい、京へ
 出てきてこないして油売って歩いてんのやが、かつぎの油屋ではうだつが上がらん。粗
 父ももう寄る年波や。一ぺん顔見に帰ろうと思うんやが、ちいとまとまったもんでも持
 たなんだら、敷居が高うて帰(い)なれへんがな。どこぞに一山当てることはないかいなあと、
 捜してたら、あんたがこの茶碗ひねくりまわしてたんや。こらひょっとしたらと思うた
 さかい、やっと貯めた小判二枚。身代限り放り出して茶店のおやじと喧嘩までして、買
 うてきたんやが、それがそんな……そんなアホなお前。アアー、こらどうもしやあない。
 博打張って、目と出なんだんや。あきらめなしゃあない。えらいすんまへん、お騒がせ
 しました。番頭はん、堪忍しとおくなはれ、さいぜん頭どついたりして。いやあ、もう
 気が立ってたもんやさかいなあ、えらいすまなんだ。お店の皆さん、お騒がせしました。
 茶金さん悪気があったんやおまへんねん。どうぞまあ堪忍しとおくなはれ」
金「ちょっとお待ち、しばらく、しばらく、ちょっと、もう一ペん、もう一ペんまあお戻
 りやす。……あんさん大阪のお方。そうどっしゃろな、京の人間にはとてもそんな真似
 はでけまへんわ。やっぱり商いは大阪どすなあ。たったそれだけの思惑で、失礼ながら
 二両といやあ、あんたにとっては大金じゃろ。それを放り出しなはった。言わば茶金と
 いう名前を買うていただいたようなもの。茶金、商人冥利につきます。あんたに損さし
 てはわしの気がすまん。この茶碗、わたしが買わせてもらいます」
油「エェッ、千両で」
金「いや、千両ではよう買わん。元値の二両、そこへもう一枚つけさしてもらいます。こ
 れはまあここまでの足代、箱代、風呂敷代としてお収めを。あんたな、一山当てようて
 な気ィ起こしたらあきまへんで。ああもう掘出物をしようとして長年、年期を入れた商
 売人が損をするのがこの道や。地道におかせぎやす。それに優るものはない。親御さん
 かて憎うて勧当したわけやなかろう。あんたが三年間ヽ肩へ天秤棒を当てごうて
 一生懸命働いた、それが何よりの親御への土産や。この三両持って、早よ帰って顔見せ
 て喜ぱしたげなはれ、これ持って早う」
油「いやあ、そらいかん、そらいかん。そらいかん、おのれが勝手に思惑をやって、それ
 が外れたさかいというて、あんたにまどうてもらうてな、そんな筋合いはない。これが
 あんた当たったら、わたしが儲けてしまいまんのやないかいな。それが外れたさかいち
 ゅうて、あんたに……それは筋が通らん、この三両は受け取れん。そらあ、いかんわ
 ……いや、そらなんぽなんでも、そんなあつかましいことは、いやあ………ええ、……へ
 え……さよかァ。ほたらあつかましいけど……へえへえ……ほななあ、これお借りいた
 します。ようもらわんが、……有様はあした油仕入れる銭もおまへんねん。ほんならこ
 れ、お言葉に甘えて、お借りします。いつ返せるやわからんが、あるとき払いの催促な
 しで、なんとかなったら必ずお礼と一緒にこちらへ持ってあがりますで……ほたら今
 日のところは御恩にあずからしてもらいます。ほんならまあ、この茶碗」
金「あァこんなもん要らんさかい、持って帰りなはれ」
油「いやいやいや、百貫のかたに編笠一つということもある。まあまあ、これだけなと取
 っといてもらわんと、気がすまん。番頭はん、ほんとに堪忍しとおくなはれや。お店の
 皆さん、えらいお騒がせしました。どうも、サイナラごめん」
 逃げるように帰ってしもうた。
 茶金さんぐらいの商売人になりますと、随分と良えところに出入りをいたします。関白
鷹司公のお屋敷へ参上したときに「茶金、近ごろ世上に何かおもしろい話はないか」
「この間、手前どもの店でかようなことがございました」「それはおもしろい、麿も一度、
その茶碗が見たい」……茶金さん、早速人を走らして茶碗を取り寄せます。関白さんが水
を注いでみると、なるほど、ボタリ、ボタリと漏る。のぞいても、調べてもキズはない。
「はてな、おもしろき茶碗じゃ」と短冊を取り上げますと、サラサラと一首の歌。〝清水の
音羽の滝のおとしてや、茶碗もひびにもりの下露〟というおもしろい歌がこれに添いまし
た。
 さあ、お公家さんの間でこれがえらい評判になって、御所の中もこの噂で持ちきりです。
ついに時の帝の耳へこれが入る。「一度その茶碗が見たい」………えらいことになってき
た。さあ茶金さん精進潔斎して、御所へ茶碗を持参いたします。どんな方の前へ出ても茶
碗はおんなじこと。水を注ぐとポタリ、ボタリ……。御裳(おんぞ)のすそをぬらしました。のぞい
ても、調べてもキズはない。「はてな、おもしろき茶碗である」と、筆をお取り上げにな
りますと、箱の上へ、万葉仮名で、〝はてな〟と箱書きがすわった。えらい値打ち物にな
って、茶金さんとこへ返ってきた。
 大阪の金持ち、鴻池善右衛門、当時日本一の金満家。鴻池さんがこれを聞いて、
鴻「茶金さん、その茶碗、わしに千両で売ってくれ」
金「尊いお方のお筆の染まりましたもの、お売りするというわけにはまいりまへん」
鴻「ほんならその茶碗、うちに預からしてくれ。抵当にとって、ほいで千両貨そうやない
 か。お前はん、うちから千両、金借ってくれ。で、それをかたにとる、早よ言うたら質
 に置くのや。ほいで早よ流せ」
 ………えらい手間のかかるもんで、まあ、早よ言うたら千両に売れた。これをあの油屋に
知らしてやったら、喜ぶやろうと思てますが、油屋もきまりが悪いさかい、近所通らんよ
うにしてます。ある日のこと。
丁「旦那」
金「なんや」
丁「こないだの油屋さんか、そこ歩いてました」
金「早よ行てつかまえといで、早よ行て」
油「誰や、誰や誰や。引っ張るのン。なんや、ええ、……茶金さんとこの丁稚衆さんか。
 ウワァ、こないだはすまなんだ。旦那によろしゅう言うといて。ええ、なんやて、旦那
 がわしに会いたい……。会えるかいな、面目ない。もう、そう引っ張ったら油がこぼれ
 るがな、これ何をするのやいな、これ」
金「おお、油屋さん。こっちへ入っとおくれ油屋さん」
油「ウワァ、茶金さんか。こないだの三両返せちゅうたかてもうない」
金「返せとは言わんわいな。ちょっと話がある。まあまあ、お座布団を持ってきなはれ。
 まあとにかく、そこへまあ、せめて掛けとおくれ。まあまあ、実はな、油屋さん、こな
 いだのあの茶碗」
油「もうあの話せんように、もう。脇の下から冷汗が出る。もう、あの話せんように」
金「そやない、まあ聞かんかいな。……あの茶碗、実は千両で売れました」
油「えッ、……そういう奴や。おのれはもう、……京の人間はえげつないとは聞いてたけ
 どあんまりひどいで、お前。ええ。人にキズ物やキズ物や言うて三両に値切っといて、
 それを千両とは、口銭の取りかたが」
金「違うがな、まあ聞きなはれ。実はあの茶碗なァ」
油「ええ……はあ……へえ…………へえ、あの茶碗が………いや、お天子さんに、へえ
 ――、恐れ入ったなあ、茶金さん。……あんた偉い人やなあ。わしが持ってたらキズ物
 の安茶碗や、一文の値打ちもないわ。あんたの手に入ったんで、あれにそれだけの箔が
 ついた。なあ茶金さん、こら人徳でっせ。……良え話聞かしてもろた。いや、あの時な、
 もう金はまああないしてあんたにもろたもんの、しょうもないことやって恥かいたと思
 たら、もうむしゃくしゃ、むしゃくしゃしておもろなかった。今の話で、もう胸がスー
 ッとしました。気持ちようこれから商売に行けます。おおきに、おおきに」
金「ついては、この金わしは懐へ入れるつもりはない。もとはと言やぁあんたがあんなも
ん持ち込んできたさかい起こったこっちゃ。とにかくな、……半分の五百両、これあん
 たに取ってもらわんと、わしの気がすまんで、これ持ってお帰り。これだけあったら、
 あんた人きな顔して大阪へ帰ねるやろ。ほいで残りの五百両、ウム、このごろ京にも随
 分困ってはるお方も多いと聞いてる。で、わしやこの金でできるだけ施しをしてさしあ
 げたい。いくらかお金を残しておいて、親類や友達を集めて、お祝いの大酒盛りをやり
 たいと思てますのや。とにかくあんたにこれを持って帰ってもらわんことには、困るで
 な」
油「そらいかん、そらいかん。こんな大金をもらう筋合いはない。あれ、わたしとあの茶
 碗とは、三両もろた時にもう緑が切れてまんねん。あれがこうなったというのは、あん
 たの人徳でできたこっておます。五百両やなんて大金、……そんな、そら………いやあ
 ーなんぽなんでも、それはもらえまへんわ、あんた………いやあ、そらちょっとあつか
 ましい………ええ、さよか……ほなあのォ、こン中からこないだの三両ひいてもろて」
金「いや、三両ぐらいどっちになってもかめへんがな。これ持って大阪へ帰んなはれ」
油「さよか、えらいすんまへんなあ。ほなあつかましいけど、へえ。……はたらな、ほた
 らなちょっとなあ、こン中から、小判五枚。ちょっと番頭はん、これ、こないだの膏薬
 代や、取っといて。あんたの頭どついて、わしゃほんまに気にしてたン……いいや、こ
 れ取ってもらわんとわしもこの金もらいにくい、まあこれ取っといて。それから今の
 丁稚っさん、ようわしを見つけてくれたなあ、ほんまに、あんたにつかまらなんだら、
 こうはいかなんだ。これ三両、ちょっと小遣いや、取っといて。それからな、この小判
 一掴み、お店の皆さんで分けて」
金「これ、これ、おい。小判まきないな、これ。大事にしいや」
油「大丈夫でやす。これから清水さんへ行て、茶店の親父喜ばしたりま。おおけ、ありか
 とう」
 喜んで帰って行った。
 茶金さんも良えことをしてやった、これであの油屋、喜んで大阪へ帰ったことであろう
と思うとりますと、それからしばらくたったある日。表のほうで、ワァーという人声。何
事やしらんと、茶金さんこう門ロヘ出てのぞいてみますと、大勢の人数が揃いの浴衣に、
向こう鉢巻き、何やら重たそうにかたげて、こっちへやってくる。
 前へ立って扇子広げて、「エーライやっちや、エーライやっちや」と音頭とってるのが、
こないだの油屋……
金「何をしとおんねん。あいつ、まだあんなことしてるやないか。これ油屋さん」
油「ワァー、茶金さんか、十万八千両の銭儲けや」
金「十万八千両の金儲け。どうしたんや」

油「水がめの漏るやつ見つけてきた」
 

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February 11, 2008

ロト6。

2008_2_11roto

最近買い続けていたロト6の番号。
ところが先週の当選番号が 17.22.25.26.27.43 だったので
何となくこの番号を買うのがイヤになってしまった。
何番を買えば当たるんだろう???
姫様にマンションを買ってやらねばならぬのに・・・(笑)。

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February 10, 2008

サックス5本。

2008_2_10cat

バンドの練習に行こうとするのだけれど、足が動かない。
電車で行こうか?自転車で行こうか??
寒い・・・・。
覚悟を決めて、自転車で走り始める。
こんな寒空では鳩も大変だろうと餌を1袋、途中のホームセンターで買ってみる。
あの鳩は生きているんだろうか??
ところが何処を探しても、雀も居ないし、鳩もいない、1羽もいない。
餌は重たい・・・。
じきに暗くなってきたので気づいた。
あぁ、もう家に帰って寝てるわ・・・・遅すぎた。
川岸で見かけた猫も寒そうだった。

2008_2_10honda2

サックス5対ラッパ2では吹き負けた。。。
ちゅうか、私はラッパ 1人分の働きがないし。。。(笑)。

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February 09, 2008

地獄八景のCD。

2008_2_08bunchin

図書館に地獄八景のCDが戻ってきていたので借りてみました。
文珍はんに対しては落語家というイメージがありません。
昔はTVで何でもやっていましたから。
期待しないで聞くとこれがなかなかよく錬られています。
オチの大王は今の人にはやはり理解不能と見たのか、枕話でもって
さりげなく登場させて、記憶の中に下剤として埋め込む作業をしていました。
時事ネタもふんだんに盛り込まれて、笑えます、今となっては古いですが・・・。
〝粋〟を大切な要素と考えていた私の方がすでに間違っていたのかも知れません。
ただ、あのガラガラ声はどうにも・・・。

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February 08, 2008

お父さん猫。

2008_2_07cat1高感度二枚撮り

わかりにくいとは思いますが、野良ネコ3兄妹のパパ猫です。
ここまで寄ってくるのは珍しい。

2008_2_07cat2高感度二枚撮り

ストロボ使ったら目玉しか写らなかったわ(笑)。

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February 07, 2008

携帯電話。

2008_2_07kei

先日ラーメンおじさんが自分の携帯でこのページを見せてくれました。
「見てみぃ、さっきからずっとスクロールしてんねんでぇ。
 たいがい経つのにまだ終わらへんのや。全部字やで。堪忍してほしいわぁ~。。。」

携帯でこんな落語読む人おらんやろうに。。。
ちなみに私の携帯は非常に古いので、このページを開くことは出来ません。
携帯でどうなっているかなんて知りません・・・あしからず・・・。

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February 05, 2008

地獄八景亡者戯。

正直なところあまり好きな話ではありません。
初めの登場者が途中で綺麗に極楽に行ってしまい消え去ってしまうからです。
オチも時代のせいか、コーラックか何かにして貰わないと通じません。
屈指の大作と云うことですが、文七元結の方が好きです。
まぁ、これもオチが全くピンと来なかったのですが・・・。


  地獄八景亡者戯


 これはごく古いおはなしで、もう百三十年ぐらいは充分経っているという、古風なそし
てうんと長いお話でございます。
 落語ではどうも極楽より地獄のほうがおもしろいようなぐあいで。まあ、どっちやみち
皆様方もお出かけにならなならんのやさかい、ほんまに行く前に一ペん落語のほうでご案
内しとこうというわけです。ここにございましたのが、われわれ同様という一人の気楽な
男で、よそから鯖をもらいまして、手料理で、こいつをこう、二枚におろして骨付きのほ
うを戸棚になおしておいて、片身を刺身にしてそれを肴に一杯飲んで、ゴロッと横になっ
て寝てしまいますと、夢ともなく現ともなく、空々寂々として暗い所へ出てまいりました。
前へ行く者、後から来る者、めいめいひたいに角帽子という三角の布を当てまして、首か
らは頭陀袋、手には麻幹(おがら)の杖を突き、糸より細い声をあげ、
喜「おうい、おーい、(と、ぜんという鳴物になる)もし、そこへおいでになるのは伊勢屋の
 御隠居と違いますかいな、あ、やっぱりそうや、もうし、伊勢屋の御隠居」
隠「ああ、誰やとおもうたら、喜ィさんやないか。えらいとこで会うたな」
喜「えらいところで会いましたな。まあごきげんさんで」
隠「こんなとこへ来てるのにあんまりごきげんなことないで、わしは」
喜「ああ、ほんにそうだしたな。ええ、お変わりも……ありすぎまんな、これは。どない
 言うて挨拶したらええか」
隠「挨拶なんかどうでもええのやが、ほんまにえらいとこで会うたなあ」
喜「しかしあんさんのお葬式、私、お手伝いに上がりましたんやで」
隠「てったいに来てくれてたな」
喜「あ、わかってましたか」
隠「わかってるがな。わしゃ棺桶のすきまから、のぞいて見てたんや、ああ、あれも来て
 くれてるなあ、誰それも来てくれてるなあと思うて見てたんや。お前はんもいろいろと
 手伝うてくれてたわい」
喜「立派なお葬式でしたな、わたしゃ、あんな立派なお葬式見たことない。お飾りがみご
 とにでけてお供えが山のようにこう積み上げてあって、香典もぎょうさん上がってまし
 たで」
隠「あの香典の中からお前はん千円ごまかしたやろ」
喜「……わかってまっか」
隠「わかったるがな、なんであないな事するのやいな」
喜「うわア、こんなとこでばれるとは思わなんだ。いえ、煙草屋の大将がな、帳場あずか
 ってて、一生懸命算盤入れて計算してまんのや。どうしても千円あまる、おかしいな、
 金をまた勧定し直しては帳面調べて、千円あまる、千円あまる言うてる。あんまり、気
 の毒なさかいにわて、千円ごまかしたったら、あ、ちょうど合うた言うて喜んでた」
隠「何をすんのやいなこれ、阿呆な事するのやないがな。しかしわしの葬式の時に、あな
 いして、手伝いに来てくれたのに、それがなんでまた……」
喜「さあ、人間て判らんもんでな。私、魚が好きでっしゃろ、よそから、大きな鯖をもら
 いましたんや。ほいでこれ手料理で、わて、ちょっと包丁を持てるんでな、二枚におろ
 して骨付きのほうを戸棚に直して片身を自分が造りにして食べたら、こいつに当たった
 んでんな。すうとそのままこんなとこへ来てしもうた」
隠「えらい災難やったな」
喜「しかし死んでみるといろいろ心残りな事がおまんな」
隠「そらそうや、だれしも心残りのないもんはないわい。お前はんの心残りというのを当
 ててみようか」
喜「わかりますか」
隠「判らいで。一緒になって、まだ二年にもならん、かわいい女房が心残りというのや
 ろ」
喜「ウハッハ、阿呆らしいそんなもん、一年たったら、たいがい鼻についてまっせ。目に
 ついた女房、このごろ鼻につきちゅうやつでっさかいな。えろう心残りなことおまへん
 のや」
隠「そんなこと言うたりないな。ほな、お腹に子供でもあって、やや子の顔を見ずに死ん
 だのが、心残りか」
喜「子供も何も、気もなかったン」
隠「ハハン、ほなお前はん、人に言えんような所に、お金でも隠しといて、金に気が残っ
 て……」
喜「金なんかがありますかいな」
隠「ほな何が心残りや」
喜「同じ死ぬんやったらな、戸棚へ直しといた片身の鯖。あれみな食て死んだらよかった
 と思うて、それが残念で」
隠「ようそんな阿呆なこと言うてるでお前。こんなとこへ来る人はみなもっと大きな心残
 りを持って来てるのや」
喜「ああ、さよかな。ところで、わたしらこれで、どういう事になりまんのやろな」
隠「まあまあ、閻魔はんの前でお裁きを受けて、罪の軽いもんは極楽へ行くし、罪の重い
 もんは地獄へ行くんやろな」
喜「はあ、地獄ちゅうたら、どこにおまんのやろな」
隠「さあ、まあ、極楽の近所にあるんやろかい」
喜「極楽はどこにおます」
隠「地獄の隣か、なんかやろな」
喜「ほなその地獄は」
隠「極楽の隣」
喜「わからんがな、それでは」
隠「わしかて初めて行くとこやさかい、わからん」
喜「しかし、あんた、私より大分、早う死んでるのに、なんでこんなとこ、うろうろして
 なはったんで」
隠「争われんもんやなあ。脚気患うてたさかいにどうしても、道がはかどらんのや。何や
 ったら、お前はんどうぞ、先ィ行ってもろたら良え……」
喜「いやいや、これこそ、ほんまに急がん旅やさかいに、一締にしゃべりながら行かして
 もらいます」(鳴物とめる)
 二人がしゃべりながら歩いて行く。
 後ろのほうからやってまいりました一かたまり、これはまた賑やかな連中で、娑婆の大
金持ちの若旦那、この世でおもろい事は何にもないようになってしもた。遊びたいだけ遊
んでしもた、食いたいものは食てしもた、行きたい所は行ってしもた、何にもする事がな
い。いっそのこと今度はあの世へでも行って遊ぽやないかというので、みな供する奴はお
らんか、へえぜひともお供を……てな、馴染の芸妓や舞妓、お茶屋のお内儀さんやら仲居
さんやら、幇問連中。若旦那あの世へひとつ遊びに行かはるそうで、お供さしとおくなは
れ。ほたらどないして死のう、うまい物食うて死のう。今まで命が惜しかったさかいに河
豚をよう食べなんだ、河豚に当たって死んだらよかろう、それがよかろうちゅうんで、フ
グに河豚を買いにやりまして、フグに料理してフグに食べて、フグに当たってフグに冥途
へ来てしもた。そんなんでっさかいに、扮装からして変わってますな、男はみな黒羽二重
に河豚の紋どころか五ツ紋でついてます。女のほうも、河豚の紋付にねぶかや水菜が裾模
様になったあるという格好で、やかましく言うてやってまいります。その道中の陽気なこ
と……。(三下り「わが恋」の替歌で、♪死出の山、芸者舞妓を引き連れて来てみりや、亡者の賑わ
いは……)
一八「……おうい、……若旦那ちょっと待ったんなはれ、待ったんなはれ。そう先ィ先ィ
 行ったらいかんがな。ええ、女子連中遅れてんのやがな。ちょっと待ったんなはれ。み
 な早うこい。何をしてんのやいな。早よこい……」
芸妓「そな言うたかて、わてら早よ歩かれへんわ。……ちょっと待っとおくなはれ言うて
 んのに、……あない、とっとことっとこ、先ィ行かはる。ちょっと……」
一「若旦那、……ちょっと待ちちゅうのに(と、鳴物とめる)、ちょっと待ちなはらんかい
 な、あんたせわしない人やな。人ほったらかして……」
若「ああ、そうかいな。えらいすまなんだな。ちょっと考え事をしてたもんやさかいに」
一「あの連中の格好見てみなはれ、座敷着のまま来てまんのやがな。そう早う歩かれへん
 のやさかいに、………うつむいてトットコトットコと、何を考えてはりまんねん」
若「いやちょっと心配事」
一「心配事なんかあるわけないがな。そんな事忘れて、派手に陽気に、うわあと死んでき
 てんのやさかいなもう、そんな陰気な事おきなはれ。もうちょっと陽気な事考えまひょ
 いな。あっちへ着いたら賽の河原かどっかの地所買いこんで、レジャーセンターか何か
 ポーンと建てるとか」
若「相変らずお前は気楽なこと言うてるけども、そこへ行くまでに一つ心配な事があるの
 や」
一「何でんねん」
若「わしゃ娑婆に居てる時分に、地獄極楽の絵を見たことがある。三途の川とかいう川が
 流れててな、そこに柳みたいな木が二本立っててその下に、やせこけてあばらの見えて
 る胸はだけた、白髪頭のあのやせた恐い顔した、しょう塚の婆とかいうのが居るやろが
 な。亡者の着物をはぎとるちゅうやっちゃ。はいでは木の枝にひっかける、奪衣婆(だつえば)とか
 いう、あら、恐ろしいお婆ンや。男連中はまあええとして女子連中、裸にされたら可哀
 そうやろ。地獄の沙汰も金次第ということがあるさかいな、そこ何とか金で話をつけて、
 裸にならずに行く工夫はないかいなあと思うて、そいで思案して歩いてるのや」
一「ほな、何でやすかいな。そのお婆ンというのを金でウンと言わしたらよろしいのン。
 え、そういう時にこの一八を忘れてもろたら困るなあ」
若「そうかえ」
一「そうかえて………金でお婆ンをウンと言わすのは、私の十八番だっしゃないかいな。
 あんた忘れたんかいな。そう、南のこれ(小指)の一件、ええ、長年の深い馴染が居て
 るのに、あんたおんなじ南地でまた他の女子に手エ出しなはったやろがな。さあ、これ
 のお母はんが承知しますかいな。恥かかされた言うてギャアギャアもめてきて、手切れ
 や何や言うてきた時に、わたいが中へ入ってだっせ、どうでも向こうが五百万円出せち
 ゅうところを四百万で話をつけた。あの時の腕を買うてくれな困るで」
若「ちょっと待ちいな。これ、あの時わしたしか五百万円出したで」
一「ああー」
若「ああやあれへんかな。ほたらお前、あのとき中に入って百万円も、いてたんかいな」
一「えらいとこでばれた」
若「えらいとこでぱれたやないがな。相変らずお前という奴はしょうのない奴やな。ほん
 まに、ええ」
一「まことに、相済まんこって」
若「いまさら謝ったかて仕様がない。まあ、しかしな、ここでしゃべってしもて良かった
 んやで」
一「さよか」
若「そうやがな、これから閻魔はんの前へ行てそれがばれてみいな。みんな罪がないんで
 極楽へ送られる。お前だけその罪で地獄へおとされる。言うてしもたさかいにその罪は
 滅びるてなもんやけれども」
一「あっ、言うてしもたら罪は滅びますか」
若「昔から、懺悔というて人にしゃべってしまうと、その身の罪は滅びると言うな」
一「さよか、……ほなもう一つあるのん、言うてしまおかしら」
若「まだ、なんぞあるのかい」
一「いえ、そう、あんたと別府へ行ったことがおましたなあ、大勢、キーさんやら、ハー
 さんやら、みな一緒にィな。あの時、ダイヤの指輪が見えんようになった見えんように
 なった言うて人騒ぎしたことがおましたやろ、あれ、実は私や」
若「あれお前かいな」
一「うーん、まことに相済まんこって」
若「こんなとこで言い出して、しょうがない奴やなあ、ほんまに。ほなら改めてあれをお
 前に上げるさかいな」
一「えらい、すんまへん、大きにありがとうさんで。それから」
若「……まだあるのかいな」
一「箱根へ行た時ね、そう、あんた上等のカメラが見えんようになった言うてた、あれも
 わたいや」
若「……盗人連れて歩いてたんや。もうええわ、あれも、お前にやるわ」
一「大きにありがとうさんで、それから」
若「まだ………何ぽほどあるのやいな」
一「あのそう、時計が見えんようになったんも、あれも、わたいで、……大きにありがと
 う」
若「まだやるとは言うてえへんやろ。もうええわい、もう何があってもお前だけを地獄へ
 やるのも可哀そうな。わしのほうから起こったことはみな帳消しにしてやるさかいな。
 他のんは知らんで」
一「他では決してやってえしまへん、しやすい人に決めてたさかいに」
若「……どついても音のせん奴やな、お前だけは。ほんならな、ひとつ、この財布を渡し
 とくさかい、何とかうまいこと話をつけて……」
一「へい、たしかにお預かりをいたしました。エーと、ハハァこれが三途の川か。オッ、
 これが言うてた木やな。……なんかどこにも居てえへんがな。あ、あすこに茶店
 があるな。一ぺん聞いてみたろ。ちょっとお邪魔をします」
茶「はい、どうぞどうぞ、まあお掛けやす」
一「いえいえ、あのう、ちょっとお尋ねしたいことがあって」
茶「何でおまっしゃろ」
一「あのう、これが三途の川という川ですか」
茶「ハァ、これがあの有名な三途の川でございます」
一「ヘエー、わたしもな、娑婆で地獄極楽の絵を見たことがおまんねん。それで見るとな
 んや陰気な、怖い、恐ろしげな川やけど、なかなかこれ、きれいで良え川でんな」
茶「はあ、まあ景色の良え所でございましてな、昔はもっときれいな水が流れてましたん
 やけど、このごろ、ずっと上手のほうに工場がぎょうさん出米たりしまして、ちょっと
 水が濁りました」
一「はあン、やっぱりこっちも公害問題が起こってまんねんな」
茶「ええ」
一「で、柳みたいな木があすこに立ってまんのやが、そう、あの下に、しょう塚の婆とか
 いう怖いお婆さんが居って、亡者の着物をはぎとるとかいうことを聞いてまんねやけど、
 見当たりまへんな。今日はお婆ン休みでっか」
茶「まあまあ、しょう塚の婆さんやなんて、あんた、そら古い話。そんなものはもうよっ
 ぽど昔のこってっせ」
一「はあ、あれは昔の話」
茶「はあ、そんなものはもう……、ずっと前はそらああいうのがございましてな。ええ、
 あのお婆さんやってはりました。先祖代々、家の権利とか格式とかいうやつで、あのお
 婆さんの家はずうっと亡者の着物をはぐのを商売にしてはりましたんやけどな、まあ終
 戦からこっちへ地獄も変わりましてな」
一「へええ、やっぱり変わりましたか」
茶「はあ、それで、古いああいう慣習はいかんいうて、みな廃止になってしもうたン」
一「へぇー、ほんなもうああいう事はでけんように……」
茶「はあ、もうお婆さん、仕事がないようになってしもうてねえ」
一「困りましたやろな」
茶「そいでその当座は、失業保険もろたりして何とかやってはりましたんやけども、どう
 にもやっていけん言うて、閻魔はんとこへ相談に行かはりましたらな、閻魔はんも、そ
 らお前とこはずっと昔からあれを家の職にしてきたんやさかい、そら気の毒な、何とか
 考えたろ言うて、閻魔はんがお婆さんの相談相手になってやってるうちに、ちょっとお
 婆さんの器量の良えとこへ閻魔はん目ェつけて、お婆ンを二号さんにしやはりまして
 な」
一「へぇ………閻魔もまた物好きななあ、しょう塚の婆、何も二号にせんかて……」
茶「いいえ、婆というのは言わば役の名前みたいなもんで、お婆さん、なかなかあだな年
 増でっせ。はあ、それで、閻魔はんのお世話になってはったんです。おとなしいしては
 ったらよかったんやけどなあ、こうしてても暇なさかいに、何か商売がしたい、バーか
 何かやりたい言うてな。で、閻魔はん、ちょっと元手出してあげて、そいで、バーをや
 りましたんや。バーババアちゅう店をねえ」
一「ははあ、なるほどな、みな大概やること決まってまんな」
茶「ほんでまあ、やってみりやあ商売もおもしろいし、なかなかようはやって………ええ、
 機嫌良うやってはりましたんやけどもな、やっぱり、閻魔はんも仕事が忙しいので、あ
 んまり来やはらしまへんやろ。お婆さんも退屈なもんだったさかいな、バーテンさんと
 ちょっと………いえ、学生アルバイトが来とりましたんで……」
一「学生アルバイトのバーテン………何ですか、こっちにもやっぱり学生てなもんおまん
 の」
茶「ありませえでかいな、こっちにかて……。獄大の学生さんでな」
一「ゴクダイて、何でんねん」
茶「地獄大学いうて、一番の名門の学校でんねん」
一「ははあ、こっちもやっぱり名門やとか、二流やとか、いろいろありまんの」
茶「そら獄大へは、なかなか入られしまへんのやでェ」
一「その地獄大学ちゅうのが……やっぱりこっちも入試難でっか」
茶「あたりまえでんがな。あれは大体こっちが本場ですねん。受験地獄と言いまっしやろ、
 あれは」
一「ハハア」
茶「娑婆のほうがその真似をしとりますねん」
一「なるほど」
茶「なかなか優秀な学生さんでね、お婆さんの店でアルバイトでバーテンやってはりまし
 たんや。ちょっとそれがまあ、なかなか鬼前の良え赤い衆でなあ」
一「……ちょ、ちょっと待っとおくなはれ、赤い衆て何でんねん」
茶「若い衆ですけど赤鬼でんねん、それが。そやさかいこっちでは赤い衆とこうなりまん
 ねん」
一「ははあ、とその、鬼前ちゅうのんは」
茶「まあ娑婆で言うたら男前が良えちゅうのを、こっちは鬼前が良えとこうなります。そ
 の赤い衆の鬼前の良えところへ目ェつけて、お婆さん、とうとう間鬼しやはりましてん」
一「間鬼」
茶「間男ちゅうところが、間鬼、とこうなりまんねん」
一「ハハア、お婆さん間男した……。閣魔はん怒りましたやろな」
茶「いいえ、さばけたお方、わしが忙しいさかい無理もない。好き合うてんのやったら夫
 婦になったらええがな」
一「ほう、エンマンに解決したな」
茶「あんたかて洒落言うてなはるがな。そやけど、目のつくところに居影ってもろうては困
 るさかいちゅうて、地獄を追放になりました」
一「地獄追放、……お婆ン困りましたやろな」
茶「それで、お婆さんの遠緑に当たります雷の五郎八つぁん、あれが親類先に当たるんで
 す。で、その学生さんな、赤鬼さん、ずっと雷の五郎八つぁんとこで夕立の水汲みに雇
 われて、やってはりましたんやけど、あら夏場だけの仕事だっしやろ。で、秋になって
 仕事のほうはないようになるわ、そこへ慣れんことやったもんやさかい身体の調子が悪
 なって、お婆さんも、男をお医者にはかけんならんわ、薬代は要るわ、食べてはいかん
 ならんわ、もう食うに困ったあげく、とうとう電話売春というやつにまで身ィ落とさは
 りましてなァ」
一「へえーッ、しょう塚のお婆ンが、電話売春(コールガール)」
茶「そうでんがな。ちょっと評判になりましてなァ、お婆さん、サービスが良えいうてよ
 うはやったんやけど、だれかれなし、どんなお客にでも出てたもんやさかい、娑婆から
 来たての亡者から質の悪い病気もらいなはって、もう、体ガタガタになってしもうて、
 ………その間に若い男は逃げてしまうし、とうとう気の毒に六道の辻でのたれ生きしや
 はりました」
一「の、たれ生きィ……、はあァ、のたれ死にやなしに、こっちでは、のたれ、生きまんの
 かいな」
茶「そうでんね。ほいで娑婆へ出てな、もうこら罪滅ぽしやちゅうて、ずっと四国のほう
 をお遍路さんで回ったはりましたそうな。そういう噂を聞いてましたんやけど、いつの
 間にやらまたこっちィ帰ってきてな、ほいで、自分もいろんなことやってきたさかいち
 ゅうて、。わが半生を語る、ちゅうて、『週刊地獄』ちゅうやつに連載でずうっと記事載
 せはったんでんねん。これがえらい評判になって、単行本かベストセラーになるやら、
 またそれを当て込んで映画になるやら、お婆さん、えらい時の人で売れてまんねんで」
一「判らんもんでんなあ。しょう塚のお婆ンがえらい名士……」
茶「女では一番の名士になりましてな、娑婆へ行ったり帰ったり、いろんなことやったは
 るさかい、これがまあ、ほんまの翔んでる女やてなこと言われてな、もう女の代表や言
 うてな、地獄女性党ちゅうのをこしらえて政界に打って出ようということに……。ちょ
 うどそこへ市川房枝さんが来やはりましたやろ。さっそく顧問にお迎えしようちゅうて、
 お婆ンもえらいことになってまんねやがな」
一「おもろい話聞いたなァ。さよか、ほんならもう、あのう、着物脱がされるてな心配は
 ……」
茶「そんなもん何にもあらしまへん。もう地獄もこのごろ暮らしようなりましたさかいに
 な、そういう心配はご無用で」
一「さようか、そら結構だんなあ、さよか。で、あんさんはいったい何でんねん」
茶「何に見えます」
一「そうでんなァ、まあわたしの考えるのに、お母さんの胎内にあったまま死んで、ここ
 へ来たやや子と違いますか」
茶「何でだんねん」
一「そらあんた、極楽へやるほどの功も無い、というて地獄へ落とす罪はもちろん無いわ。
 そやさかい地獄と極楽の境目で、茶店をやってはる、てなもんでっしゃろ」
茶「まあおもしろいこと考えはったけど、そんなんと違いまんねやワ、わたし、鬼の娘で
 っせ」
一「あんた、鬼の娘、ほう――」
茶「十八でんねやわ」
一「ああ、鬼も十八ねぇ。そやけど、十八にしたら、えらい古いこと、よう知ってはりま
 んな」
茶「もう鬼の娘はすっと十八ですねん、何十年たっても十八で」
一「便利よろしいなあ、娑婆の娘はんが聞いたら喜ぶやろなあ、そら。そやけど、鬼にし
 ては角がおまへんな」
茶「わたしの彼氏が浮気でもしたらその時はぱっと角出しまんねん。出してみまひょか」
一「いやあもう結構、出してもらわんでも結構でやす。ほいで、これからどうしたらよろ
 しいねン」
茶「あの、もうちょっと行ったら三途の川の渡船場というところから渡し船が出て、向
 こうへ渡してくれまんねん」
一「あ、渡し船が出て、船で渡してくれまんの」
茶「そうでんねん。あの船もなあ、昔は手こぎの櫓だしたんや。それがポンポン蒸気にな
 って、ところが、この前の石油ショックで油が高うなったしどないしよう………ほなも
 ういっそコンピューターにしようか……とか、いろいろ相談して、船頭もなしにコンピ
 ューターでシュッと船が動くようにしたんで。ほなあんた、亡者がぎょうさん乗り過ぎ
 た、船が動かんいうて、はア、亡者がずうっとたまってしもうてね、こらやっぱり船頭
  一人つけないかんなあ言うて………で誰かが考えて油が高いもんのこっちやさかい手こ
 ぎにしようかちゅうて、また昔ながらに船頭さんがこうやって、鬼の船頭が乗って櫓で
 こぐと、またこの、手づくりの味が良えたら言うて、それをカメラで撮リにくるやら、
 えらい評判になっとりま」
一「あ、さようか、こらおもしろいな。ほんならあの、渡船場まで行ったらよろしいな。
 大きにありがとう。ほんなら、これちょっと、少ないけど茶代……」
茶「まあ゛まあ、えらい済ンまへん。あのう、お茶も上げまへいで……」
一「いやいや、もう結構だ、結構でやす、おおきに。若旦那、お待とおはん」
若「いやいや、こっちで聞いてた、裸にされる心配はないそうやな」
一「ヘイ、安心して、皆さんどうぞお出ましを」
 ソロソロ、ソロソロ一同がやってまいりますと、大きな棒杭に「三途川渡船場」と書い
てございます。
甲「ええ、渡し船てなものはどこに……」
乙「あ、あれやあれや。……見てみなはれ、まあ金ピカの屋根がついて、霊柩車みたいな
 船でっせゝあの屋形船。エーと、鬼の船頭が居るそうですが……」
甲「……船頭も何も居りまへんで」
乙「いやいや、艫のところに、それ、毛布が二枚ありまっしやろ。あれ人間みたいな格好
 してまんがな。船頭あれかぶって昼寝してんのと違いますか」
甲「ああ、なるほど」
乙「ちょっとめくってみなはれ」
甲「へえへえ、この下に寝てるような具合やな。へえ、……ウワッ、めくったら鬼が出た
 で」
乙「桐か坊主か食うとけ」
甲「花札やがな。阿呆なこと言うてんのやないで」
鬼「亡者の衆か」
甲「うわぁ大きな鬼や。恐い顔してまんな、やっぱり」
鬼「おう、船に乗り込め乗り込め。さあさあ、その歩み板を渡ってどんどんどんどん乗り
 込むのじゃ。うん、途中で立ちどまるのやない、向こうの端までずうっと行って……、
 おい、船に乗って立ってるやつがあるかい、揺れるがな、座れ、座れ座れ」
 乗り前が決まりますというと、鬼の船頭、歩み板をぱ引き上げます。赤樫の櫂で一つ、
ぐーッと(水音)突きますというと、船は岸を離れます。櫂をあやつりながら川の中ほど
まで来ましたら、鬼は何を思うたんか、いきなり碇を取り上げると、川の中ヘザブーン、
ダーツと船が止まった。
甲「おい、何でこんなとこで船止めるねん。向こうまで渡さんかい」
鬼「ぎゃあぎゃあぬかすな。向こう岸まで渡してほしかったら、渡し銭を出せ」
甲「あれ、渡し銭が要るの」
鬼「あたりまえじゃい、施行船ど違うぞ」
甲「渡し銭、何ぼや」
鬼「そら死に方と病で値か違う」
甲「………えらい、おもろいな、もし。死に方と病で値が違いまんねやて。おい船頭、何で
 死んだら安い」
鬼「そんなことが言えるかい、アホ。そんなこと言うたら、みなそれで死んだ言うてしま
 いよる。さあさあ、小口から病を言え、お前から言え、お前から」
甲「ええ、そんなもん他の者から聞け。なあ、皮切りは灸でも熱いねん」
鬼「お前、さいぜんから要らんことばっかりしゃべってんねや。お前から言え」
甲「ちょっと言いにくい」
鬼「何で言いにくいねん」
甲「わい、ちょっと汚い病気で死んだんでな」
鬼「あんまりきれいな病気てなものはないわいな。何で死んだんや」
甲「痔ィこじらしてな」
鬼「痔かいな」
甲「もう、脱肛をこじらしてしもうた」
鬼「痔は脱肛かい」
甲「いや、もうみなやったン。切れ痔からイボ痔から、脱肛になって、このときにもう痛
 うて難儀した。そのとき思い切って手術しときやよかったんや、ええ。それをええかげ
 んにしてたもんやさかい、だんだんひどうなって、しまいには痔瘻になって、とうとう
 命取りになってしもうたんで」
鬼「ほう、脱肛をこじらしたんか、エー、百円といこうかな」
甲「何でだんねん」
鬼「脱肛のお百ちゅうやろが」
甲「……そら鬼さん、だっき{姐己}のお百と違うか」
鬼「何でもええ、千円出せ」
甲「……いま、百円と言うたんと違うのかい」
鬼「いやいや、諸物価高直につき、十倍取ることになったんじや。こないだ閻魔はんのほ
 うからずっとお触れが回ってきたんや」
甲「十倍とは高いで、ええ、百円が千円になったんかいな」
鬼「ああ、閻魔はんのお触れでしゃあないねん」
甲「そんな無茶苦茶なお触れかなわんで」
鬼「高うなってもしやあないわ、エンフレや」
甲「……閻魔はんのお触れでエンフレでやすと。ほんなら脱肛のお百の十倍で千円でっ
 か」
鬼「ああ、こっちへかせ、こっちへかせ。お前は何で死んだ」
乙「わたい腎臓で死にましたんや」
鬼「うん、腎臓というたら小便が出んようになる病気やな」
乙「ええ、それだんねん」
鬼「うん、エー、そうやな、ほんなら百六十円もらおうか」
乙「百六十円、何でだんねん」
鬼「シシの十六や」
乙「シシの十六、なるほど、それで百六十円でっか、ヘエ。ヘイ、ほんならこれを……」
鬼「お前は何じゃ」
丙「わたい、肺ガンでな」
鬼「おう、肺ガンか。たばこを吸うたか」
丙「もう二コチン中毒やな。朝から晩まで吸い続けやった」
鬼「うん、六百四十円出せ」
丙「何でだんねん」
鬼「パッパ六十四やろ」
丙「けったいな勘定やな。ほなちょっと七百円で」
鬼「おっ、こっちへかせ、こっちへかせ」
丙「つりを、……おつりは」
鬼「相手は地獄じゃ、入ったら出んぞ」
丙「ええ、あんなこと言うてまっせ。相手は地獄や、入ったら出んちゅうてつりくれしま
 へんで。きっちり渡さなしゃあないな」
鬼「おい、お前は何で死んだ」
丁「わたしは赤痢でんね」
鬼「ああ、便所へ通うたか」
丁「通いづめやったな」
鬼「ああ、四百九十円じゃ」
丁「何でだんねん」
鬼「ピチピチ四十九や」
丁「……汚い勘定やなあ、へえ、五百円、もうつりはよろしいわ」
鬼「おい、そこの女子、お前は何で死んだ」
女「鬼さん、わたし、お産が悪うて死にました」
鬼「うん、百二十円じゃ」
女「百二十円、何でだんねん」
鬼「産で死んださかい、サンシの十二や」
女「ハア、ほいで百二十円、あさよか、ほんならこれを」
△「鬼さん、わたし、産後が悪うて死んだんで、サンゴの百五十円置いときます」
鬼「そっちから勘定すな、ややこしいやつやな。そっちの二人連れ、お前らは何で死ん
 だ」
男「鬼さん、わたしらは、末は夫婦と約束したんですけど、どうしても親が許してくれん
 のでな、海へ身ィ投げて二人で死んで来たん」
鬼「心中か、見りゃお前、似合いの夫婦やないかいなあ。一緒にしたったらええのに、可
 哀そうに」
甲「鬼、泣いてまっせ、もし。鬼が泣いたらおかしいな」
鬼「鬼の目にも涙ちゅうことがあるわ。よしよし、お前ら二人で八十円でええわ」
男「何でだんねん」
鬼「二人で死んださかいに、ニシが八や」
甲「こら鬼」
鬼「何じゃい」
甲「あんなん、粋な心中やないかい。八百円ぐらい取ったれ。わいら初めに言うてえらい
 損や、脱肛のお百いうて千円取りやがんねん。おれは今から言い直す」
鬼「言い直しは倍や」
甲「ああ恐」
鬼「おい、エー、そこらに居てるの。お前ら一かたまりかたまってわあわあ言うとるが、
 仲間か」
一「ヘイ、これずっとみな仲間でございましてな。ここにおいでになるのがわれわれの御
 大将、ええ、金満家の、娑婆のもう大金持ちの若旦那で、粋なお人だっせ。もう遊びた
 いことも食べたいことも何にもないぐらい、したいだけのことをしておもろいことがな
 いようになってしもうたちゅうんで、へえ。この上はあの世へでも行って遊ぽうかちゅ
 うてな、ええ、若旦那がそない言い出した。ほいでみな馴染の芸妓はんから舞妓さんか
 ら、あんた、仲居さんからお茶屋のお女将さんから、みなそろうて押しかけることにな
 った。エッヘッヘ、わたしゃまたミナミの幇間で一八と申します。以後お見知りおかれ
 まして、よろしゅう……」
鬼「ようベラベラしゃべる奴やな、お前。で、何で死んだ」
一「そのことや。どないして死のうかと、みな寄って相談したン、うん。ほなまあ手近な
 ところで、ブランコ往生ちゅうのんやったらどうや。ブランコ往生てどないするねん。
 松の木か何かに紐ぶら下げて、こんな輪こしらえてな、そこへみな首突っ込んで、ぶら
 んとぶら下がる、歳暮のシャケみたいにずらっとこう並んでぶら下がろうかちゅうたん
 でやすけど、あら首が伸ぴるし、鼻たれたりしてざんない(見苦しぃ)さかい、あんな
 んいやや。ほな、めざし往生ちゅうのやろか。めざし往生てどないすんねん。線路の上
 にみな枕並べてずうっと並んで寝まんねん。ほいで電車にスーッとひいてもらう、こら
 もう、ほんあっさりした死に方やちゅうたんやけどな、このお女将さんが、首と胴とが
 離れるのは縁起が悪いと、こない言いまんねん。ほんなら海へ飛び込んで死のうかちゅ
 うたら、わたいは泳ぎを知らんやなんて……」
鬼「何をごじゃごじゃしゃべってけつかんねん。何で死んだんやわからんがな、それでは。
 ほいで、とどのつまりはどうや」
一「ほいで結局は、うまいもん食て死のうかちゅうてな、当たりそうな河豚を買うてきて、
 その河豚食べて、河豚に当たって死んだんでやす」
鬼「河豚かいな、エーと、……河豚は何ぽやったかいな。あの役者のとき何ぽもろうたか
 いな、あれ。おい、河豚に当たったらどんな具合や」
一「恐ろしいもんでんな。四苦八苦の苦しみでっせ」
鬼「うーん、四苦八苦の苦しみか、一人前百八、干八十円ずつもらおか」
一「何でだんねん」
鬼「シク三十六とハック七十二、合わして一人前が百八、千八十円」
一「えらい勘定やな、ええ。高うついたなあ。ほんならこの、ちょっとこれ、十人分でん
 ねん、一万円」
鬼「これでは足らんぞ」
一「そこはあんた、団体割引」
鬼「そんなもんあらへんあらへん。きっちり出せ、きっちり。……おい、お前は何で死ん
 だ」
喜「わたしは鯖に当たって死んだんでやす」
鬼「サバか、エー、サバ、サンバ二十四といこうかな、エー、ほな二百四十円や」
喜「鬼、だんだん邪魔くそうなってまっせ、もし」
鬼「お前は何で死んだ」
口「わたしは肝臓を患うて死んだ」
鬼「肝臓か、エー、お前ちょっとあと回しや」
口「何でや」
鬼「ちょっと、カンゾウ(勘定)がわからん」
口「……これよろしいで、これ。カンゾウがわからん言うてまっせ」
◇「鬼さん、わたいも肝臓や」
鬼「お前は八百円出せ」
◇「何でだんねん」
鬼「お前のは嘘やろ、うそ八百や」
◇「言わなんだらよかったな、おい」
鬼「ええな、こっちへ。おい、お前は何で死んだ」
△「エー、わたしは交通事故でんねん」
鬼「ああこのごろよう来るわい。お前また酒飲んで、酩酊運転ちゅうやつをしてたんやろ」
△「違います。わたしはそんな、何にも悪いことなかったんでんねや。これだけはまあ聞
 いとおくなはれ、悔しいてたまらん。わたしはまじめに運転してたン。後ろから来た奴
 が酒飲んでたんでんな、ドーンと突き当たりやがんねん。ええ、わたし跳ね飛ばされて
 ………ウーその時はまだ生きてたんやで、あんた。そやけど、だあれもあんた……、け
 ど薄情なもんや。どの車も誰も止まってくれへん、スッススッス通り過ぎまんねやがな、
 ええ。よっぽど経ってから白バイが来てな、それからあっちやこっちィ電話したりして、
 よっぽど経ってから救急車が来てくれて、よっぽど経ってから病院へ行ったんで。ほん
 で医者が、ああ、もうこら手遅れや、もう三十分早かったらなァ言うてんの聞きながら
 死んでしもうたんです。ほんまにこんな情けないことおまへんで。もうちょっとあの白
 バイが早う来てくれたらと思ってなァ、わしやあの白バイが恨めしいてかなわん」
鬼「ああ、えらい白バイを恨んでんねやな。白、シロクニ十四といこうかな」
△「ほんな二百四十円でっか」
鬼「四百八十円出せ」
△「何でだんねん」
鬼「白バイちゅうさかい、倍の四百八十円」
△「あんた、何じゃろと金がさ上げるのにかかってなはるがな」
鬼「わしかてやっぱり年間の予算ちゅうものがあるさかいな、ノルマだけは上げとかない
 かんでな。次の奴は……」     
 ちゅうわけで、順々に渡し銭を集めてしまいますと、ガラガラガラガラ碇を巻き上げる。
今度は櫨と変わります。赤松を割ったような腕によりをかけてこぎ出した。
鬼「やァうんとしょ(と、水音、舟唄が入る)。………うろちょろするな。おい、はまったら
 生きるぞ」
甲「……ちょっと言うことが違いまんな、もし。はまったら生きる言うてまっせ、あれ。
 ……いっぺんはまったろうかしらん」
鬼「おいッ、しょうむないことすなよ、お前。向こうへ行って、お前、帳簿と人数が合わ
 なんだら、また始末書書かんならん。お、おかしな真似せんといてくれ、ほんまに……」
 ぼやきながら向こう岸まで鬼が渡します。一同がゾロゾロゾロゾロ上がりますと、えら
い賑やかなところで………
甲「ああ、ぎょうさん人がゾロゾロしてまんなァ。もうし、ちょっとお尋ねします」
O「はい」
甲「ここは何ちゅうとこで」
O「何ちゅうとこ、ああ、お前はん新入りの亡者かい」
甲「ええ、今日来たとこで、ピッカピカの一年生で」
O「そやろなァ、ここはもう誰でも知ってるとこじゃ。ここがまあ一番の盛り場や。なッ。
 見たらわかりまっしゃろ、道が六つに分かれたある。六道の辻というのはここやがな」
甲「はァ聞いてます、六道の辻。はァここがそうでやすか。真ん中の道はえらい幅が広お
 まんな」
O「ああこれが地獄のメインストリートでな、冥途筋ちゅうねん」
甲「なるほど、ほな突き当たりが南海電車で」
O「それは御堂筋やな、これは冥途やさかい冥途筋じゃ」
甲「あ、冥途筋、なるほど。ああ、ビルがぎょうさん並んでまんなァ。ヘー地獄文化会館。
 こんなもんが出米てまんねやな。今日は文芸講演会、溝演会やて」
O「ああ講演会なんかこのごろはやって、ようやってんのやで」
甲「へえ、……もし、えらい顔ぶれでっせ、この文芸講演会、ちょっと見てみ。芥川龍之
 介、有島武郎、太宰治、三島由紀夫、川端康成、テーマが〝自殺について〟ちゅう………
 聞いてみたいなア、自殺する時はどういう心境やったんやろな。こらなかなか地獄も楽
 しめそうでんな、もし。エー、あ、こんな立派な道があるかと思うたら、こっちのほう
 はまだ舗装もしてまへんな。えらい道がぬかるみでんがな」
O「ああ、これ幽霊の辻ちゅうねん」
甲「幽霊の辻」
O「ああ幽霊やさかい道もどろどろや」
甲「アッハ、理屈やな、幽霊の辻やさかい道もどろどろでやすか。あっちのほうはえらい
 賑やかでんなア」
O「ああ、あっちのほうは遊び場所になっててな、屋台やらなんかぎょうさん出てるや
 ろ」
甲「へえ、赤い灯、青い灯が光ってますな、あれ。ええ、うん、歓楽街、なるほど。地獄
 ソープ………ソープランドまであるんでやすかいな」
O「ああソープランドももう古いこっちゃ。このごろはノーフン喫茶というのか出来て」
甲「ノーパン喫茶と違いますか」
O「虎の皮のフンドシをはずすさかい、ノーフン喫茶や」
甲「へえ、サービスはどんなもんで」
O「行ったことないさかいわからんな」
甲「あっちは、グランドキャバレー『火の玉』、グランドキャバレーがあるがな。本日の
 ショー、幽霊のラインダンス………幽霊のラインダンスて、どないして足上げまんねや
 ろな」
O「さあ、わしゃ見たことないさかいわからんなァ」
甲「幽霊のラインダンスに骸骨のストリップやて。……何を見せまんのやろなァ」
O「行ったことないさかい、知らんちゅうてるねん」
甲「あっちのほうも賑やかでんな」
O「ああ、あっちのほうはズラーッともう、バーやキャバレーや、クラブやとかディスコ
 やとか、もうスナックでも何でもあるねん。もうちょっと向こうへ行ったら、またこう、
 料理屋やお茶屋が並んでる」
甲「ヘーこらおもしろいな、いっぺん行ってみたいでんなァ。その向こう側のほうも人が
 ゾロゾロ歩いてますかな」
O「あっちは芝居町や」
甲「芝居町」
O「興行もんが並んだァんね」
甲「地獄に芝居てなもんがありまんのか」
O「あらいでかいな。何を言うてなはんねん、あんた。こっちの芝居見たら、娑婆の芝居
 やみな、あほらして見られんで。名優はみなこっちィ来てんねやさかいな」
甲「ああそら理屈やな。ほな昔の名人か見られますか」
O「見られるてなもんやあるかいな。ついこないだもあんた、ええ、忠臣蔵の通しが出た
 んやけど、市川団十郎が初代から十一代目まで、全部そろうてやりよったんや。これは
 娑婆では見られんでェ」
甲「そら、娑婆ではでけんわ」
O「その代り、ややこしかったな。由良之助も団十郎なら勘平も団十郎、平右衛門も師直
 も本蔵もみな団十郎や。あんなややこしい芝居なかったなァ」
甲「そら見たいなア」
O「つい先月やったか、五代目と六代目の菊五郎がそろうて四谷怪談を出したが、来たな
 あ、客は」
甲「来ましたやろなア」
O「ああ。関西の人やな、あんたら。関西歌舞伎かて顔ぞろいやで。え、見てみィな、あ
 すこの看板。雁治郎、延若、仁左衛門みな先代や。な、梅玉、魁車、寿三郎、市川寿海」
甲「ほんにほんに並んでますなア」
O「向こうの蓮華座ちゅうところは新派や。新派かて娑婆では見られんで、あれ。喜多村
 緑郎、伊井蓉峰やろ、花柳章太郎、大矢市次郎、水谷八重子とそろてんねやさかいな」
甲「そろうてますなあ。あれ、あっちの看板は………ジョイントリサイタル、越路吹雪に
 ジョン・レノン。……こら凄いな」
O「もう切符が無いそうな」
甲「そやろなあ。寄席もおますか」
O「寄席かてそんなもん、こっちは名人ぞろいや。うん、こないだ三遊亭円朝が十日間
 『牡丹燈龍』を続きでやって、よう入ったで、これは。今日の看板見てみィ、あれ。文
 楽、志ん生、な、金馬も円歌も先代やで、見てみい、並んだあるやろ、ええ。小さんか
 て昔の小さんやさかいな、円生に、橘家円蔵やとか、こっちが大阪落語、顔ぶれ見てみ
 い、あれ、ええ、松鶴も春団治も、みな先代や、あれ」
甲「なるほど、なるほど、立花家花橘、文団治、米団治、文枝、文三、ああ、円都、染丸、
 桂米朝………もし、米朝という名前で死んだ噺家はおませんが、あらまだ生きてんのと
 違いますか」
O「あんじょう見てみいな、肩のところに近日来演と書いたある」
甲「……ははあ、あれもうじき死によんねやな。可哀そうにいま時分何にも知らんとしゃ
 べっとるやろなあ。ああ、こらいっぺん見に行かないけまへんなア。こっちのほうも何
 か賑やかな商店街みたいなものがありますか、あれは何でんねん」
O「あっちは念仏町や」
甲「念仏町ちゅうと」
O「念仏を売ってまんのや」
甲「念仏売ってるて、念仏みたいなもん買うてどないしまんねん」
O「あんた何にも知らんのやな。これは肝心だっせ。これは買うていかないかん。これか
 ら閣魔はんの前でお裁きを受けるやろ。その時に良えお念仏を買うて行たら、その念仏
 の功徳で少々の罪なら帳消しになる。まあ娑婆で言うたら裁判に弁護士を頼むようなも
 んや」
甲「あ、さよか。良えお念仏買うて行たら罪が帳消し……、地獄の沙汰も金次第というの
 は、ここらのことを言いまんねやなあ。……いやいや、ご互いに罪はないことおまへん
 さかいなァ。そら買わないかんが、どこで買うても一緒でやすか」
O「いやいや、そらまた宗旨宗旨でみな店が違うんや」
甲「宗旨で、ヘーわたしとこ真宗でんねんけど」
O「あ、真宗や浄土やあんなんはみな南無阿弥陀仏、そう、……あすこにこう大きな本願
 寺さんの屋根みたいな店が見えたあるやろ、一番大きな店な。あの上に南無阿弥陀仏屋
 と看板があがったるやろ、向こうで買うたらよろしいねん」
乙「わたしは法華宗でんねん」
O「法華はその筋向かい、ひげでピンピンと跳ねたような看板があがったあるやろ、南無
 妙法蓮華経屋。向こうで買うたらよろしい」
丙「わたい真言宗でんねん」
O「真言はそのこっちのほうの古い建物があるな。おんあぼきゃべろしゃのまかぽだらま
 にはんどまじんばらはらはりた屋と書いてある、向こうへ行き」
丙「ふふん、なるほど」
丁「わたしは天理教でんねやが」
O「天理さんは向こうのほうに、悪しきを払うて助けたまえ天理王のみこと屋としたある。
 向こうで買うたらよろしい」
戊「わたしキリスト教ですが」
O「キリスト教は向こうの洋館建ち、看板にアーメン商会と書いてあるやろ、向こうで買
 うたらよろしいねん」
戊「ああなるほど」
▽「わたい創価学会で」
O「ああ創価学会はいま改築中でな、仮事務所のほうで営業しておりますわ」
▽「ああさよか」
O「その向こうが、禅宗に天台宗、金光教に霊友会……」
甲「ぎょうさんあるんやなあ。ああ、あっちのほう、何か今バーンと花火の揚がったあの
 店は」
O「あらPL教団や」
甲「いろいろおまんねやな。ほンなまあお互いに念仏買うて行きまひょか」
 ゾロゾロゾロゾロ念仏町へかかりますと、両側からやかましく言うて客を呼んでおりま
す。
念「御同行――」(囃子♪なまいだ……)
念「お茶湯持ってこう、抹香くすベェ、お茶湯持ってこう、抹香くすベェ」
甲「もうし、あら何を言うてまんねん」
O「あら娑婆で言うたらお茶持ってこい、たばこ盆持ってこいちゅうのを、こっちゃお茶
 湯持ってこい、抹香くすベェ言うてんねん」
甲「うわア、えらいおもろい。ああ、この辺へ入りまひょかな、お邪魔をします」(囃子
 止める)
念「ヘイ、どうぞ、どうぞ、まあおかけ。おーい、お茶湯持ってこーい」
甲「いやいや、もうそない大層に言うてもらうほどの買いもんようしまへんのやが、お念
 仏を一つ分けていただきたいと思いましてなア」
念「ヘエヘエ、どの辺のところにさしてもらいまひょ」
甲「どの辺の……、いろいろおまんねんやなァ。棚にぎょうさん並べてあるが、もうし、
 あの一番上の棚に金ピカの箱に入った立派なんが置いてありますが、あらいかほどしま
 んのん」
念「あれで八十万円でございます」
甲「八十万、……なんと高いもんでんなア」
念「いやいや、しかし、あれぐらいのお念仏を買うていただきますとな、少々の罪なら帳
 消しになりまして、極楽から自動車で迎えにまいりますが」
甲「いやあ、わたしらな、それほどあくどいことはしてえしまへん。そないに重い罪はな
 いんでやすがな。エーその下の漆の箱」
念「はい漆塗りの良え箱に入ってます」
甲「あれでいかほどで」
念「あすこになりますとな、大きいほうが七十万で、小さいほうが六十五万円ということ
 になっておりますが……」
甲「なんと高いもんでんなァ」
念「エー、東本願寺さんのほうが、まだごたごたしてまっしやろ。その関係でちょっと品
 薄になってますんで……」
甲「ああ、さよか。……その下の桐の箱に入ってるやつね、あれはいかほどで」
念「へえ、あれが六十万、五十五万、五十万と、大中小とこうなっとりますがな」
甲「はあ……五十万円、その下の木箱は」
念「へえ、あれが大が三十五万で、エー小さいほうが三十万と、この辺がまあ、お手頃
 ………ええ。ちょっと頃合のところやないかと存じますがなあ」
甲「いや、三十万円はちょっとよう出しまへんなァ。その下の紙の箱に入ってるやつね。
 あすこらはどれぐらいで」
念「へえ、あれですと十五万から二十万ちゅうとこでんな」
甲「うーん、あの紙袋に入れて並べてあるやつね、あら」
念「あれは大中小で十万、八万、七万と、こうなっております」
甲「それでも七万円もしまんのか。ぐっとこの格安ちゅうのおまへんやろかな」
念「格安ね、本日の特価サーピスでな、ここにございます箱が、これが一つ突っ込みの三
 万円ちゅうことになってますが」
甲「もう少々安いとこ」
念「あっちの隅に時期遅れと半端もんが積み上げておまんのやが、あれならもうどれでも
 一つ一万円にしときますが」
甲「いろいろとおまんねやなあ。時期遅れに半端もんがあるんやて、……ドラえもんのビ
 ンに入ってるのは、これは何ぼ」
念「あ、これはお子たち用になっておりますので、これはもうお子さんは罪があんまりお
 まへんので、これはもうぐっと安うて、三千五百円から五千円ちゅうとこで」
甲「これ、わたしには」
念「いやァ、そら大人の方はこれはあきまへん。やっぱり一万円ぐらいは出してもらわん
 となァ」
甲「もっと、もうちょっとぐーと特価ちゅうのおまへんやろかな」
念「どれぐらいやったらよろしいねん」
甲「二千円……てなとこおまへんやろか」
念「二千円てな………そんなこと言うてもろたら困るわ。それならこの裏通りへ行っても
 ろたら、念仏作る職人が住んでまっさかい、あすこに念仏の裁ち屑を積み上げて一山何
 ぽで売ってまっさかい、それでも買うて行きはったらどないでんねん」
甲「おッ、そんなんがおまんの。オホッ、裁ち屑が出るとは知らなんだな。ほんならちょ
 っと、ちょっと行ってきますわ、どうもお邪魔しました。ええ、……念仏を作る職人の
 とこで裁ち屑が出るのやて。どこでも何でも裏筋ちゅうのは安いもんでやす。おう、ほ
 んにほんに、何や並んでまっせ。積み上げて売ってまっせ。ちょっと見てみなはれ、こ
 れ、八百円の千円のちゅうような値段がついたあるがな。七百円てなのもおますな。ち
 ょっとお尋ねします」
△「はい」
甲「エーこれ、お念仏ですか」
△「お念仏でおます」
甲「七百円、八百円、千円てな、こんな……九百円ちゅうような、こんな安い値段で売っ
 てなはるのか」
△「ええもうこれ、エーこんな値段で買うていただいております」
甲「どういうお念仏でんねん」
△「へえ、これ、こっちからな、びっくり念仏、湯念仏、居眠り念仏と、こうなっとおり
 まんねん」
甲「……はあ、そのびっくり念仏ちゅうのはどういうお念仏やねん」
△「これは暗い夜道なんか歩いてましてな、曲がり角をしゅっと曲がると、向こうからも
 人が来てな、フッと出会うときがある。ハッ、なんまん陀仏、あれがこれで」
甲「……ハァン………ほんなこの湯念仏ちゅうやつは」
△「これ、お風呂へ入っててな、良え具合で、ちょっとぬるいめのお湯で………体がほか
 ほかとぬくもってくる………良え気持ちになりまっしやろ、……ああァなんまん陀仏、
 ……あれが、これ」
甲「あんまりありがたそうなのはおまへんなァ。こういうのでも極楽へ行けまっしゃろか
 な」
△「……さあ……」
甲「さあァて、……さあァ言われたら困るな、おい。ほんなら向こうへ行って、あの特価
 品を、もうちょっと値切って買いまひょうかなァ」
 しゃあないちゅうわけで、みんな懐に合わして手頃のお念仏を買いますと、ゾロゾロゾ
ロゾロ閻魔の庁の正門へやってまいります。と、大勢の人間がもう黒山のように集まって
おりまして、
乙「もうし、みなザワザワ言うてますが、これ、何でこないぎょうさん集まってまんね
 ん」
△「へえ、今月は久しぶりで閻魔の庁の、この門が開いて、閻魔はんのお裁きがあるちゅ
 うんでみな寄ってまんねん」
乙「ああ、ほんならこの、お裁きは毎日あるんと違いますのか」
△「毎日ありますかいな。……あんた、今日来て、今日これにぶつかった、そらよっぽど
 運がよろしいのや。なかなか、あんた、……このごろ裁判が長艮引いてなァ、もう、いろ
 いろと問題になっておりまんねやがな、ええ。今日は久しぶりやいうてみな集まってま
 んねや」
乙「さよか。しかし、もうあとどれぐらい待ったら開きまんねん」
△「それがわからんねん。これな、ちょっと知らしてくれりやええのになァ。役人てなも
 のはな、たまるだけためとけてなもんでっせ、もう。お役所仕事ちゅうものは不親切で
 いけまへんな。困ったもんでんなァ。どれぐらい待ってたらええんやわからんがな」
酔「どけッ、そこ。どけッ」
△「な、な、何だんねん」
酔「おれが、か、かけおうたるわ。ほんまにいつまで待たすねん、ばかにしやがって。お
 れァいっぺん閻魔にかけおうたる」
△「えらい人が出てきましたで、もうし。大分酒に酔うてまっせ、この人。ほんならあん
 た、ひとつ閻魔はんにかけおうとおくなはれ」
酔「あァおれァかけおうたるがな。どない思うてくさんねん、なァ。長いこと待たせやが
 って、ほんまになァ。切符だけでも先ィ売りやがったらええのに……。みな、ずらァと
 並んでおとなしう待ってけつかる。開けさらせ、こらァ閻魔、良えかげんに開けたらど
 うや、いつまで待たすねん、こらツ。閻魔、閻魔閻魔、こらツ。閻公、閻てき、閻ちや
 ん、閻州、えん州(遠州)森町よい茶の出どこ、♪娘やりたやお茶摘みにィ……」
鬼「おーい、赤鬼青鬼黄色紫」
赤「何じやい」
鬼「えらいのが来よったぜ、おい。表たたいて」
赤「な、何がえらいねん」
鬼「わしら困るがな、あんなん来てもろたら。いま彼奴がうなってたあれ、浪花節の清水
 港と違うか」
赤「そうらしいな」
鬼「鬼より怖いで」
赤「……何を言うてんねや、お前。心配しないな、お前。あんなもん生酔がくだ巻いてる
 だけやないか」
鬼「さあさあ酒に酔うてる奴ちゅうのはかなわんのや」
赤「何でェな」
鬼「今は酔うてるか、そのうちに正気(鍾馗)になるやろ」
赤「オッ(ハハハ鍾旭になられたら恐ろしいなァ」
鬼「いやァ日本から来た亡者ちゅうのはうるさいねや。先代の閻魔ほんの時やったかいな
 ァ。娑婆から朝比奈三郎ちゅうのが来て、閻魔はんの横面張り飛ばした。あれから閻魔
 はんがかたげ(首が傾くこと)になったちゅうこともあんのやさかい、ぽちぽち開けた
 ほうかよかろう」
赤「そうしょうか」
鬼「おい、ほんならかんぬきはずせ」
 鬼が門に手をかけまして左右ヘギギギィーッ、(鳴物、ガガ……ガン)亡者の連中、雪崩
を打って中へ入ってまいります。腕章を巻いた鬼の整理員がぎょうさん出てきて、
鬼「ああ、こりゃ、静粛に。……行列をつくれ行列をつくれ。……四列ずつ、四列ずつに
 並んで………女はこっち、男はこっちじゃ。女はこっち男はこっちと分かれて進めよ。
 女はこっち男はこっち、……これ、女はこっちじゃ、女は……おッ、お前男か。このご
 ろ男や女やわからん奴が増えてどもならんな。なるべく子供は内側にしてな、あ、アー
 指示に従って進め」
 ゾロゾロゾロゾロ、ゾロゾロゾロゾロ、閻魔の庁の奥へ奥へと進んでまいりますと、や
はりおのずからなる威厳に打たれるかして、みなしゃべらんようになってしまいますと、
足音だけがゾロゾロゾロゾロ、ゾロゾロゾロゾロ、あたりが静まると、遠くのほうから罪
人を責める音がかすかに聞こえてまいります。(囃子、ぜん)……ピシーッ、ピシーッとい
う音。……暗がりに、きらきらきらきら光っておりますのが浄玻璃の鏡、舌を抜く釘抜
きに血のついた鋸やとか、ぞっとするような責め道具が並んだある。見る目嗅ぐ鼻、善悪
の首に罪の重さをはかる秤が置いてあったり、紙の橋てなものがございます。紙でこしら
えた橋、それを渡らされるんですな。これは体重は関係ない。罪の軽い者は渡れるし、罪
の重い者は紙の橋が破れて下へ落ち込む、体重とは関係なし。そやさかい高見山やら北の
湖が渡っても、すっと渡れる。桂春蝶やら桂文我が渡ったらドサッと落ちるという……。
正面までまいりまして、一同がそれへ座らされます。静粛にせえちゅうわけで控えており
ますところへ、閻魔大王が現われるんですが、なかなか値打ちを持たしたもんでんな、閻
魔はんてなものは。王という字のマークのついた帽子をこう頭にかぷりまして、身には唐
服というものをまとうて、笏というやつをこう胸のところへ突っ張ってます。笏(癪)や
さかい胸のところへ突っ張る、疝気やったら腰ィ突っ張らなしゃあないてなもんですが
……。カーッと口を開きまして、真っ赤な口ですな。閻魔ほんの怖い顔というやつを見て
いただきます。
鬼「閻魔の出御、下に居ろう」(鳴物、楽)
 ……(閻魔の顔をする)……これをやると、しばらく顔が元へ戻らんようになります。
王「いかに赤鬼」
赤「は、はア」
王「亡者、召し連れましたか」
赤「お目の前に控えさせましてござりまする」
王「本日の亡者、その数いかほどなりや」
赤「その数は、……エーと、もうじゃもじゃと参っております」
王「帳面をこれへ貸せ。ああ、それは三途川水揚帳じゃ、死人出入帳のほうをこっちへ貸
 せ。……なるほど、本日の亡者、これだけか、ああ、うん。男がこれだけ、女がこれだ
 けか。アー、何じゃこりゃ、中受けとなっておるがな、この亡者はどういうわけで中受
 けになっておる。こっちへは届いておらんのか」
赤「へい、それは死にかけましたんやけど注射でもっておりますのン」
王「……帳面がややこしてどうもならんな。ウーム、こんなもん片づかんかいな。火の車
 持って迎えに行け」
赤「火の車はガス会社へ貸したままになっとりまんねやが」
王「あれまだ返さんのかいな、あれ。早う行って取り返しとおいで。火の車が欲しかった
 ら噺家の家へ行け言うて………ぎょうさん回ってるさかいな。……・こJら何じゃ、この、
 四百六十二番ちゅうのは、こりゃ、腎抜けとなってるが、こらいったい何じゃ」
赤「ええ、そいつが死んで来ましたんやけど、腎臓だけか移植されて娑婆でまだ生きとり
 ますので」
王「……世の中が進むと帳面がだんだんややこしなる……うん、なるほど、相分かった。
 いかに亡者ども、よく承れ。ただいまより厳しく詮議いたし、罪の次第を問いただす
 べきところなれど、本日は初代閻魔の一千年忌に当たるゆえをもって格別の計らい、一
 芸ある者は極楽へ通しつかわす。一芸ある者は名乗り出い」
市「ちょ、ちょ、ちょっと御免、ちょっと御免」
O「何だんねん、あんた」
市「いや、市兵衛なるものは名乗り出え言うてはりましたやろ。わたい市兵衛言いまんね
 ん」
O「違う違う、市兵衛はん関係ないねん。一芸ある者は、言うてはるねん」
市「一芸あるものて何でんねん」
O「何か一つ芸があったら極楽へ通したるちゅうてはるねん」
甲「ええェ、閻魔はんてえらいおもろいこと言いまんな。芸で極楽へ行けまんのか」
O「判ってま、……判ってまんねん」
甲「何が判ってまんねん」
O「選挙が近い。……選挙が近づくと、こういう人気取りやりよりまんねん」
甲「ああ、やっぱり閻魔はんも選挙……」
O「このごろは、選挙前になったらこないなるねん。今度の閻魔はん、ちょっと人気が悪
 いんだ、あれ。何やも一つはっきりしまへんねん。原稿棒読みにしたり、読みとばした
 り……、何言うてんのやわからん。でまあ、こういう人気取りをやりよりまんねや」
甲「あ、さよか、ほたら良え時に……」
O「そう、良え時に来たんだ。こういう時は芸のある者、みな極楽へ行けまんねん」
乙「さようか、ほなわてちょっとお願い、鬼さん、ちょっとお願いします」
鬼「何じゃ、お前は」
乙「ええ、わたしあの、手品をやりまんので、ちょっとお取り次ぎを願います」
王「何ィ、手品をやる、うん、それはおもしろかろう。これへ出てやれ」
乙「それではここにおきまして、手品をご覧に入れまする。ヘェエヘん、東西(チョンチ
 ョンと拍子木がはぃる、以下同様)、まず、広げましたる右の手に指が五本、左の手に指が五本、
 これ一つの不思議……」
甲「何の不思議なことあるかい。四本あったら、不思議や」
丙「三本あったら鬼の手や」
甲「いらんこと言いな、お前は」
乙「この手の内より、何か一品、取り出してご覧に入れーる。(鳴物、しころ)……東西、
 手のひらより、ひねり出したるは垢のこよりが十本」
王「汚ぃもんを出してきたな」
乙「このままにては、見苦しい、これをぱ、こう丸めると、あか玉は腹薬、……この丸薬
 を口中へ」
王「食うたな」
乙「食たとはいつわり、生あるものにして、取り出してご覧に入れる。(鳴物、しころ)
 ……(シグサあり)……東西、千手観音は、楽あそぴの態とござい」
王「虱をぎょうさん出してきたなこれは、何が千手観音じゃ。ははあ、垢から虱になった
 というわけか」
乙「このままにては見苦しい。指の先にて、片っ端からつぷしてまいる。(鳴物、しころ)
 ……(シグサあり)……東西、血は流れて散乱するところ、春は三月、落花の形」
王「そんな汚い落花があるか」
乙「このままにては見苦しい、これをぱ、再び丸めると」
王「また丸めたな」
乙「またもや口中へ」
王「また食たか」
乙「食たとはいつわり、一粒万倍千匹虱(鳴物、しころ)……」
王「うわア、そのへん虱だらけやがな、何をするのじゃ。その辺がかゆうなってきたな、
 もうよいもうよい。そのような芸はどもならん、こっちへ、こちらへ、こちらで控えて
 おれ。次は何じゃ」
丙「私、お願いいたします」
王「お前は何をやるな」
丙「私、曲屁をやります」
王「手品のあとは曲芸か」
丙「いや、曲芸やございません、曲屁をやります」
王「曲べ、曲べとは何じゃ」
丙「屁のこき分けをいたします」
王「……そのような、不思議な芸があるのか」
丙「ちょっとよそにはございません。まず、最初は小手調べ、一尺より一寸短い屁をひり
 出してご覧に入れます、……クスン、……次は、梯子屁というのをこき出してご覧に入
 れます。ブーウ、ブーウ、ブウブウブウブウブウ、ポンポンポンポンポンポンポンポン」
王「何じゃ、それは」
丙「これはつまり、梯子の格好に屁をひり出します。まずこの両側の長いやつを、プーッ
 ブーッと出します、五段梯子になっておりますので、段々をブウブウブウブウブウと五段」
王「最後のポンポンポンというのは何じゃ」
丙「両側へ、くさびを打ち込んでまいったところ」
王「芸が細かいなあ、これは」
丙「いよいよ次は千番に一番のかねあい、長刀屁というのをお聞きに入れますが、長刀の
 形に屁がひり出せましたならばお慰み、槍ならば石突き、長刀は尻手と申します。下の
 ほうからこき出してまいります、ブリッ、ブー、ブルブルブルブルブルブル……」
王「何じゃ、それは」
丙「まず、下のところをブリッと出しまして、ブーーーーと柄を出したわけで」
王「そのブルブルブルというのは何じゃ」
丙「千段巻のところになっております」
王「ははあ、しかし、それでは肝心の身がないではないか」
丙「身はこれからきばり出す」
王「あア、もうよいもうよい。そのような汚い芸がようこの世にあったもんじゃ、あたり
 が臭うてまいった。もうよい、そのほうはこちらへ参れ。ああ次の男、お前は何じゃ」
丁「ヘイ、私は落語をやりますで」
王「落語というと」
丁「落とし噺をお聞きに入れます」
王「落とし噺というのは何じゃ」
丁「落ちのつくバカバカしいお笑い草でございまして、どのような方でも、これを聞いた
 らお笑いになります」
王「誰でも笑うか」
丁「どなたでもお笑いになります」
王「長年召し使いおる鬼どもは、ついぞ笑うた顔を見たことがないが、あのような鬼でも
 笑うか」
丁「何でもないこって、鬼さん、ちょっとこっちィおいで」
鬼「何じやい」
丁「偉そうに言いなはんな。もうちょっと側に来なはれ、耳持ってきなはれ」
鬼「何、うン」
丁「……なあ」
鬼「………ふふ」
丁「……なあ」
鬼「………っっふふ、うっふ、うふはあ、うわっはッはッはッ」
王「鬼が笑うとるぞ、こりやこりや青鬼、何がそのようにおかしい」
鬼「うわっはっはっは、笑わんといられん、こいつ来年の話ばっかりしよりますのや」
王「なるほど、これは見事なもんじや、お前もこっちへ参れ。よしよし、ちょっと待て。
 今から、名前を言うものはこれへ出てこい。この中に医者の山井養仙というのはおらん
 か。……山井養仙という医者はおらんか、お前か、ちょっと出てこい。山伏の螺尾福海
 というのは誰じゃ。……お前か、これへ出てまいれ。それから、軽業師の和尾竹の野良
 一というのはどこにおる。……お前か。歯抜師の松井泉水というのは、……お前じゃな、
 そこへ並べ。そこへ並べ並べ、医者に山伏に歯抜師に軽業師、それへ並べ。山井養仙、
 面を上げィ。そのほうは怪しげなる、未熟なる医術を用い、助かる病人まで殺してしも
 うた。その咎は軽からず、来世は人間に生まれ変わらすことはできん、極楽へ送ること
 もでけん。地獄へ落としてやる。山伏の螺尾福海、そのほうは加持祈祷をすると称して
 怪しげなる詐術をおこない、狐を付けるとか、わけのわからぬ事をして、金銀をいたず
 らにむさぼり取って人々を悩ましたる罪軽からず、そのほうも地獄行きじゃ。歯抜帥の
 松井泉水、そのほうは虫歯を抜くと言うて丈夫な歯まで抜いてしもうて金銀をむさぽっ
 た。その罪軽からず、そのほうも地獄へ落としてやる。和屋竹の野良一、そのほうは諸
 人の頭の上にてハラハラする業を演じて、諸人の心命を縮めたる段、咎軽からず、そち
 も地獄へ」
軽「そんな阿呆なこと言いなはんな、私は商売で……」
王「黙れ、この四人の亡者を熱湯の釜へ叩き込め」
鬼「ははッ、…………さあ、釜へ入れ」
歯「何をしなはんのや、そんなもんで」
鬼「さあ入れ」
歯「入れて………ちょ、ちょ、ちょっと、突きなはんな、突きなはんな。あかんちゅうの
 に、あかんちゅうのに。見てみなはれ、熱湯の釜でやすと。ちりちりッちりちりッと
 湯玉が走ってまっせ、こんなとこへ足入れたら溶けてしまうわ。……尻突きなはんな、
 大きなフォークみたいなもんで尻突きよりまんのやがな。入られへんかな。もうしあん
 た」
山「心配しな、心配しな、わしに任し」
軽「あんた、なんや」
山「わしや山伏や。そら悪いこともしたけどな、ちゃんとお山に龍ってまともな修行もし
 てんねん。こんなもん、わしがここで水の印というやつを結んだら、いっべんに日向水
 になってしまうさかいな」
軽「ほんまかいな」
山「大丈夫、大丈夫、ちょっと待ってなはれ、チチンプイプイ、チチンプイプイ(鳴物、
 ドロドロ……)もう大丈夫、手ェつけてみなはれ」
医「ほんまかいな、まだ熱そうな」
山「熱そうなて、手つけてみい。大丈夫や」
医「さよか、火傷したら知らんであんた、……あッほんまに。良え湯加減になってるで、
 これ。いっぺん風呂へ入れてもらおか、それやったらな。鬼さん、そない言わんでも入
 るわいな、みな脱いで入ろ入ろ」
軽「……ああ、良え具合やな、ああ、良え湯加減やなあ」
歯「いや、家の嬶な、ずぼらな奴でわしが死んだら湯灌もせんと棺桶の中へ放り込みや
 がったんで、気色が悪かったんだ。……あー鬼さん、ちょっと石鹸と手拭」
鬼「何を言うとる、あいつら。……大王様に申し上げます」
王「何といたした」
鬼「あの四人の亡者、熱湯の釜へ放り込んだところが、山伏が水の印というやつを結びま
 すと、あの湯が日向水になってしまいまして、中で良えきげんで、四人の者、体洗うた
 りしております。石鹸と手拭やなんか言うて」
王「けしからん奴ら……あの四人の亡者を熱湯の釜より引きずり出して、針の山へほう
 り上げィ」
鬼「はァッ」
鬼「……さあ、出てこい」
軽「もうちょっと入れといて、もうちょっと。今良えあんばいになって、郡々逸を一まわ
 り回そうかと言うてるとこ」
鬼「何ということを申しとおる。出てこい。……今度は針の山じゃ」
歯「針の山」
山「……見てみなはれ、これ、恐ろしいもんやな、針の山ちゅうたら。……ドキドキする
 ような針が……これ、上がれるかいな。こんなとこへ足乗せたら、ザクと突きささった
 まま、抜きもさしもならんがな」
軽「ここは、わいに任してもらおか」
医「何や」
軽「わしや軽業師や。こんなもん、これぐらい何やいな。おらァ長年年季入れたあるのや。
 おれのな、この足の裏、板みたいになったあるがな。こんなもんぐらい上で踊りでも踊
 ったる」
医「……そら、あんたは良えわいな、わいらはどないすんねん」
軽「かまへんがな、わしの体の上へ乗せて行たるがな」
歯「おい、そないぎょうさん、でけるか」
軽「できるできる。わしや娑婆で大勢の人間乗せてたんや。わしがこうやってたら大丈夫
 や、一人上へあがれ、一人。こう、ちちくま……肩車にしてな、肩のとこへ乗って、頭
 つかまえときや、一人こっちの手、一人こっち側に乗り、……お互いに手と手とつない
 で落ちんようにせえよ。ええか、落ちたらあかんで、で、わしやこうやって登って行く
 さかいな、この上で三番叟でも何でも踊ってみせたるのやさかい」
医「うーえらい勢いやが、大丈夫か」
軽「大丈夫大丈夫、腕、両側持っててや。皆、落ちんように。ほなちょっと、頭の上の奴、
 口上言うてくれ、口上を」
歯「え、……いや、口上言わな、上がれんか」
軽「長年のくせや。口上言うてもらわな体が動かんがな、頼りのうて」
歯「そんなもんかいな。ほたら口上言うさかい頼むで。東西(拍子木がはぃる)、これより四人
 の亡者、針の山へと、登ってまいる」(鳴物、しころ………それに合わせて登って行くしぐさ
 ……)
歯「……ははァこらおもろい」
軽「おい、……踊ったらあかんで、踊ったら、危のうてしゃない。そんなもん……」
歯「東西、首尾よく頂上まで登りつめましたる上からは、千番に一番の兼ね合い、千尋の
 谷底へ獅子の蹴落し……」(鳴物、ガガ……ガン)
鬼「大王様に申し上げます」
王「何といたした」
鬼「あの四人の亡者、針の山へほうり上げたところが、軽業師が他の三人を体の上に乗せ
 て踊りながら針の山のてっぺんまで登って行きまして、足で、ピョンピョンピョンピョ
 ン、針を蹴るんでんね。あの針ちゅうやつはな、後から蹴られたら、ぽきぽき折れます
 のや。しまいに上から、千尋の谷へ獅子の蹴落しやaうて、ザザザザーと降りたら、ザ
 ァーと、針折れてしまいました。予算の少ない折からえらい損害でっせ。どないなりま
 んねん。針の山、わやになってまんのやがな」
王「なんという亡者どもじや。仕様がないな。人呑鬼に電話をかけェ」
 人呑鬼というのは人を呑む鬼という、恐ろしい、大きな鬼がやってきました。
人「大王様、お呼ぴでごんすかい」
王「あ、人呑鬼か、久しぶりに亡者を呑ませてやる。……そこにおる四人、呑んでくれ」
人「お、久しぶりのご馳走やな。このところうまい目には会わなんだが、こら娑婆から来
 て間もない連中やな、脂が乗ってうまそうなわい。やい、四ったり、人呑鬼様が呑んで
 くれるわ。ありがたいと思え」
軽「………っわァ、恐ろしい大きな歯でんな、石臼みたいな歯やな。あれでガリガリと噛ま
 れたら」
歯「ここは、わしがついてるさかい大丈夫や」
軽「何で」
歯「わしや歯抜師や、あの鬼の歯、みな抜いてしもたるさかいな、まかしとき、まかしと
 き。鬼さん、鬼さん」
人「何じやい」
歯「お前、虫歯があるな」
人「お、お前、下からちょっと見たぐらいでわかるのかい」
歯「わからいで。こっちは商売やがな。こんな歯な、行きがけの駄賃や、わしが抜いて行
 たろか。わしらもその悪い歯で噛まれるより、良え歯で噛まれるほうが一思いで良えね
 ん。そんな虫歯の間にはさまったりしたらかなわんさかいな、ついでや、あんばいして
 いったるわ」
人「そんな事が、できるのかい」
歯「そら、商売やがな。ちょっとわしの体をお前の手の上へ乗せて、口の端まで持って行
 てくれ」
人「……こうか」
歯「もっと、大きに口あけェ、大きに。……アーンとあけェ。アーンと………っわっ、お前、
 歯性悪いで、鬼さん。……お前、虫歯だらけやがな、こらいかんわ。ちょちょ、ちょっ
 と、……口、降ろしたらあかんぞ。降ろしたらあかんで、開けててや。上のほうも、虫
 歯だらけや。さあっと、これだけ薬をつけといたら、良えと。……ちょっ、ちょっと一
 ペん下へ降ろしてくれ。いよっとしょっと。そいでな、手拭持ってるやろ、手拭。これ
 をこうロヘ噛めェ、全部の歯に、ずうと手拭をからますように、口の中へ入れるねん。
 そいで上と下の歯をぐっと噛みしめるんや、ええか。しばらくじいっと噛みしめてたら、
 熱い唾が出てくるわ、そこでわしがひィふのみっつとポンと手たたいたら、手拭をパッ
 と吐き出しや。ほたら虫歯だけがポロッと抜けるさかいな。……まだまだまだ、まだ辛
 抱せないかん、噛んどり噛んどり。……熱い唾が出てきたか。ほなら、もうよかろう。
 ほな、わしが、ひィふのみっつで声かけるさかい、その口にからましたある手拭を一思
 いに吐き出すのやで、ええな、ひィ、ふのみっつッ」
 バラバラバラ……。
人「あ、わいを歯抜けにしやがった。ウアア、こ、こいつら……」(と、四人を呑み込む)
医「うわッ、……あんたが、歯抜いたおかげでグイ呑みにしよったさかい、身体は無事に
 鬼の腹の中へ落ち込んできた」
山「おかげで助かった。あんな石臼みたいな歯でやられたらたまったもんやないけど、ヒ
 イフウミイ……あれ、一人足らん、一人足らんかな。軽業師が居らへんがな。どこへ行
 きやがった彼奴、軽業師が一人………あ、あんなとこへ、ぶら下がってるがな彼奴。え
 え、のどちんこかなんかに、つかまって、こないしとおる。オーイ、降りといで」
軽「大丈夫か」
山「大丈夫や降りといで」
軽「ああ、そうか:…」
山「……肋骨を梯子にして降りてきよったがな、器用なもんやな、ええ」
軽「さあ、鬼の腹の中で、こうやってるのやが、……これ、どうなります」
医「こんな中でじっとしてたら、鬼の胃袋で溶かされてしまう」
山「溶かされてしまうか」
医「そうや、溶かされてしもたんではつまらん。もう少々、何とかせなんだら………ここ
 は、わしに任せてもらおう」
山「あんた何や」
医「わしや、医者や」
軽「医者やいうても、お前、藪医者やろ」
医「何ぽ藪医者でも一通りの事はわかってるわい、鬼の腹の中も人間の腹の中もえろう変
 わらん、胃袋の中に居ってはいかんさかいに、とにかく外へ出よう。メスを持ってきた
 さかいな、これで、スーと切ってな、ちょっとここ割って出え、割って出え、……出て
 こい、出てこい」
歯「ハハア、胃袋出たら、えらい広いとこへ出てきたな」
医「これが、鬼の腹や」
歯「ハア、ハラやさかいに広い」
医「原っぱちゅうのは、ここからきたんや」
歯「いろんなもんがおますな」
医「いろんなもんがあるやろ、いろいろ紐がぶら下がっているやろ。この紐、これ、ちょ
 っと引いてみ」
歯「何でんねん、こら何でんねん」
医「この紐引いたら、鬼がくっしやみしよるさかいな」
歯「この紐引いたら、鬼がくっしゃみを……いよっと」
人「ヘーックション」
歯「やってる、やってる、おもろいもんやな」
医「そこにな、テコみたいなもんがあるやろ、そいつをグーと持ち上げてみい。それ、筋
 ひっぱったあるやろ、それ、疝気筋ちゅうてな、鬼が痛気おこして腹痛起こしよるさか
 い、そいつグッとこっちへこいだってみい」
軽「これを、こういうぐあいに、ウーン……」
人「あいたたたたたた」
軽「鬼苦しんどおる、苦しんどおる。おもろいな、こら、なんだ」
医「それはな、こうこそばかしてみィ、鬼、笑いよるさかい」
山「これ、こそばかしたら、笑うの、この丸いとこ、こちょこちょこちょ」
人「あっはっはっ」
山「笑うとる、笑うとる。おもろいもんやなあ」
医「その下に袋があるやろ、それ一ペんポンと蹴ってみ」
軽「何だんねこれ」
医「屁袋ちゅうのや。ポンと蹴ったら、鬼、屁ェこきよるさかいな」
軽「ホン」
人「ブー」
軽「あっはっはっはっ、おもろいな、これ、え、これ、一ぺんにやったらどないなるやろ
 な」
医「……そら、えらいことになるで、一ぺんにやったら。そら鬼、くしゃみして、腹痛お
 こして、笑うて、屁こきよるがな」
軽「鬼、ちーと、苦しめたろか」
医「あーそら、おもしろい。手分けしてやってみよか。軽業師、お前、すまんけどな、も
 う一ペん、上へあがってくれ」
軽「何をすんねん」
医「お前、上へあがって、鬼ののどのとこをな、ガシガシガシと掻きむしるねん。鬼が、
 ウェーと空えずきしよるさかいな。お前がやって、それからこっちで順々にやるんやさ
 かい」
軽「よっしゃわかった。……ョイ、ョイ、ョイと……ほんなら鬼に空えずきをさすと、こ
 こで、こういうふうにやったら良えのやな。掻きむしるのやな、ガーと」(ガシガシと掻く)
人「うえェーッ」
山「やっとおる、やっとおる」
医「そら、それを引いてみい」
山「よいしょ」
人「ヘーックション」
歯「こいつを、こうやったら」
人「あいたたたたたた」
山「これはどうじや」
人「あっはっはっはっ、……ブー」
医「よーし、手分けしてやろう」
山「お前、それ引けよ、わしやこれ引くさかい」
医「わしやこれやりながら、足でボンボン屁袋蹴るさかいな、みな、いっぺんにいくで、
 わかったあるな、そら、ひィフーのみっつ」(鳴物、しころ)
軽「これはどうじや」
人「うェー」
山「これはどうじゃ」
人「ハークション」
歯「これはどうじや」
人「あいたたたたたた」
医「これはどうじや」
人「あっはっはっは、……ブー」
人「げえッーッ、ハックション、あいたたた、あっはっは、ブー、げえッーッ、ハックシ
 ョン、あいたたた……あっははは、……ブー」
人「あーこれはとてもたまらん。此奴らが腹の中で、暴れやがって、もう便所へ行って出
 してしもたらんならん。このがきら、もう」
歯「鬼、便所へ行って出す言うてるかな」
医「出されたらたまらん、もっと腹ン中で、せえだい苦しめるのや。外へ出たらどんな目
 にあわされるやわからんさかいな。下へ降り、下ヘ降り」
歯「下へ降りて、どうするのや」
医「とにかく下へ降り、下へ降りて行たらええのや」
山「そやけど、向こうは便所で出してしまう言うてるのに下へ降りたら」
医「なんでもええのや。上に居ってかえって下し薬でもかけられたら、いてまうのやさか
 い、とにかく、ずうと下へ降りてこい、下へ」
歯「下へ、下へちゅうけれども:…、下のほうに、チラチラ明りが見えてきたな」
医「あれが鬼の肛門や」
歯「あれ肛門か、開いたりすぼんだりしとおるな。もうじき、ええ、落ちてしまうで」
医「落ちんようにせないかん。さあさあさ、ここや。この肛門のそばまでくるのや。そい
 でな、そこの肉を、ガッとつかんで、足をこっち側へこうやり。お前はんはこっち側を
 つかんで、足をずっと伸ばすのや。たがい違いにな、わしがこういうぐあいにいくさか
 い、お前はんはこの上で横になりや。こういうふうに、井桁になり井桁に………鬼がど
 うきばっても、どんなことがあっても、こうやったら、出えへんのやさかい、つかんで
 る手エ離したらあかんで」
軽「よっしや、これ離したら、あかんのやな」
医「足も、うんと突っぱってな、ここをつかんで、足をぐっと突っぱるのやで」
山「ほなわしは上からこういうぐあいに」
歯「わしや、こういうぐあいに……」
人「この連中、出てきたら、どういう目にあわすか………おぽえてけつかれ……………、う
 ーんと」
軽「この手は離さんぞ」
人「此奴ら」
山「なんの、くそったれめが、……ほんまにくそったれやな」
人「ウーンと」
歯「ああ、もうちょっとで離すとこやった」
人「ウーん」
山「危ない、落ちるとこやった」
人「ウウ、あは……(泣く)此奴ら、どうしても出よらん。仕様がないな、もう。……大
 王様」
王「いかが致した」
人「もう、この上は、あんたを呑まなしゃあない」
王「わしを呑んでどうするのじゃ」
人「大王(大黄=下剤)呑んで、下してしまうのや」

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饅頭こわい スリー。

2008_2_05man1

饅頭こわいに「じょうよまんじゅう」という物が出てきましたがこれが分からなかったので
調べてみると、なんや、ただの饅頭やがな。。。
山芋、上新粉、砂糖、あんこ、その程度なもんや。
これは作らいでかと思ったが配偶者は相手にしてくれへんさかい粉とあんこを買うた。。。
皮を延ばすのんが以外と難しい。
手を水で濡らして皮を伸ばす。
いやぁ~~むずかしい。
たいした量の皮やないのに18等分しろって・・・
たったこれだけであんこが包めるかいな。
四苦八苦してあんこをくるんで蒸し器で8分。
・・・・・
・・・・・
・・・・・
・・・・・
・・・・・
・・・・・
・・・・・
・・・・・


2008_2_05man2

饅頭・・・爆発しますのや・・・・・あぁ、饅頭こわい!!

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February 03, 2008

ラーメンおじさん、大橋に現る。

2008_2_03ra2

大橋でラーメンおじさんと待ち合わせ。
「てん」に入店。
以前、前を通りがかった時にいつか行ってみようと云っていた。
12時前だったけどお客さんはとぎれずに入ってくる。
上はおじさんが注文した焼きラーメン。
これはスープがたっぷり入ったタイプで私は初めてでした。
美味しいと思いました・・・が、700円ほどだったと思います。

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こちらはゆおりんが注文した博多ラーメン、感動は無いような。
焼きラーメンを注文していたお客さんが多かったです。
そちらが正解のような気がしました。

2008_2_03ra3

雨の中、強風の中を天神に移動、歩き回り暇つぶし。
キャナルを過ぎて、住吉神社の向こう側のデビット伊東とか云う人のラーメン屋。
芸能人大好きなラーメンおじさんの今日の1番の目的地。
しかし、何でこんなにわかりにくい場所なのか。
でもお客さんはちゃんと来てる。
おじさんは豚ラーメン+煮卵、750円。
おじさんの感想では、麺とスープが喧嘩・・・。

2008_2_03ra4

ゆおりんは鶏ラーメン、チャーシューは十分に柔らかく、
おいしい大根も入っていた。
あっさりと食べられるスープパスタ・・・でも600円。
でも木久蔵ラーメンの方が好き(笑)。
とにかく今日の印象は、何でラーメンがこんなに高いんだろう??
日赤通りの350円のラーメンを食べたときのような強い印象が湧かない。
ラーメンに対してなんか、感動が無くなってしまったような気がする。
自分で麺を作って、あ、毒の塊だと思ったときに何かがコワレタ・・・かな。

しかし、雨の中をよく歩いたものだ・・・。

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February 02, 2008

マルタイ棒ラーメン。

2008_2_02kin

ここいら辺で一番安売りのスーパーに買い物に行くんですわ。
ほいたら、マルタイの棒ラーメンが88円しよるんですわ。
値上げの後やから高くはないんでしょうけど、今までの
イメージとしてはもっと安く買える気がするんです。
最近うどんが増えました。
貧乏なんがもっと貧乏に感じる今日この頃・・・。
次は何をやめたらいいんやろ。。。

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